第22章 第二部 祝杯
そのまま持ち上げられて、指先にキスされた。
「ピースっ?!」
「僕のこと、意識してみて。ほんの少しでもいいな、と思ってくれたら、試してみてよ」
ギルデロイに手を取られたときは、嫌悪感でいっぱいですぐに手を引いた。
けれど今キラの手はピースに預けられたまま。
「…すごく今、ドキドキしてる――組分け帽子を被ったときよりも、ね」
ほら、と左手が彼の胸へと誘われる。
確かにその鼓動は早鐘を打つようなスピードで、ピースの本気さが伝わってきた。
(本当に、私のこと、好きなんだ…)
ギルデロイ以外にも告白されたことはある。
けれどそれは大抵キラとあまり接点のない生徒だったり、とても軽い調子のものだったりで。
こうして近しい人物から真っ直ぐに好意を伝えられたのは初めてだった。
「キラ。簡単に、断らないで」
「わ…わかり、ました」
「それと…これ、誕生日プレゼント。おめでとう」
ピースがポケットから取り出したのは、小ぶりなネックレス。
(あ……)
左手が開放されたかと思えば、今度はそのネックレスをつけるため、ピースがキラの首裏に手を回してくる。
その距離の近さに、頬へと熱が集まりだす。
「うん…やっぱり、この色が似合うな」
色白とはいえ、黄色人種の肌はピースのような肌色とは全く違う。
ピンクゴールドのチェーンはキラによく馴染み、リーフ型のペンダントトップには小さな緑石が一つ填め込まれていた。
(可愛い…)
「可愛いな」
首元に光るネックレスを見ていたら、頭上からピースの声が降ってきた。
「えっ」
同じことを思っていたのか、と驚いたがそれは少し違ったようで。
「君の国ではあまりこういうことしないみたいだけど…許して欲しい」
ほんのり赤みが指した頬に、一瞬の柔らかな感触。
「ぴ、ピース…!」
その行為が何だったのか理解した途端、顔が真っ赤になる。
それを見て、ピースはますます笑顔になった。
「嬉しいよ。君、あんまり感情が表に出ないから。さぁ…食堂に行こうか」
とても自然な動作で、ピースはキラの手を再び取った。