第22章 第二部 祝杯
何度断ってもキラが恥ずかしがっているのだとか何とか言って諦めようとしない。
ギルデロイは本当に面倒で鬱陶しくて最悪な男だった。
「顔だけはいいと思うのだけれど」
「えー…理解できない」
キラはあり得ない!と頭を振る。
西洋人にとってはギルデロイの顔はハンサムに映るらしい。
「やっぱりさ、育ってきた国が違うわけだから美意識も全然違うと思うんだよね。こっちでは私の顔なんかちんちくりんだよ」
「あら、そんなことないわよ。エキゾチックで素敵だと思うわ。ほら…前にあなたからもらったお人形があったじゃない。あれに似てキュートよ?」
うんうん、とアニーが頷くもキラの顔は晴れない。
何故ならその人形は”こけし”だからだ。
こけしに似ている、は誉め言葉ではない。
彼女たちはそう思っているのかもしれないけれど、キラは全然嬉しくなかった。
「――どうせブルーム家との繋がりが欲しいだけよ」
フン、と鼻息荒く仏頂面をすれば目を丸くしてこちらを見ているピースとバッチリ目があった。
「ああ、びっくりした。君でもそんな顔するんだね」
クスクスと笑われて、キラはさっと赤面した。
「お、おはようございます、ピース」
「おはよう。それから、誕生日おめでとう」
「ご存知だったんですか? ありがとうございます」
「うん、まぁね。それで…お昼休みにちょっと時間貰えるかな?」
「え?」
何か監督生の仕事でもあっただろうか。
首を傾げるキラだったが、わかりました、と応えを返せばピースは満足げに頷き、談話室で落ち合うことを決めて去っていった。
そんな二人の様子にキャリーとアニーは顔を見合わせる。
キラはそれを見て、お昼休みは先に食堂に行って欲しい、と申し訳なさそうに口にした。
そうして昼休み。
キラは足早に談話室へ向かった。
あんまりゆっくりしていると昼食を食べ損ねてしまう。
時間がかかりそうだと判断すればキャリーがきっと何か取っておいてくれるだろう。
けれど、授業の直前に大急ぎで口の中に詰め込むのはやはり避けたい。
何の用事かわからないが、作業をさっさと終わらせて食堂に駆け込みたい一心だった。