第22章 第二部 祝杯
スラグホーンはホグワーツを離れることはあまりなかったように思う。
(あー、でもパーティーは多かったか)
彼が実験に付き合ってくれないということに、キラは少なからずがっかりした。
二人きりなら、その内もしかしたら昔のように接してくれるかも…と思っていたからだ。
はぁ…とため息をつきつつ、キラは待っていてくれたキャリーたちの元へ戻った。
「どうだったの?」
「あー、うん…許可は一応…貰った、というか」
「一応…?」
「実験する前に、計画書を出せって言われちゃった」
「あらまぁ」
「それと、実験に立ち会ってくれないって」
「え…そうなの…?」
「忙しいみたいで」
キラが肩を竦めて言うと、二人は気の毒そうに眉尻を下げる。
「それで大丈夫なの?」
「怪我でもしたら…」
「うん、だから計画書を出さなくちゃダメなんだと思うし…」
昔教えてもらった魔法で自分を守ることはできる。
それが分かっているから、彼は許可を出したのに違いない。
相手が自分でなければ許可しないだろう。
「後…夜の、バレてた」
てへ、とわざとらしく首を傾げるキラにキャリーは目を丸くする。
「ちょっと! だから言ったじゃないの! ルームメイトだからって私たちも連帯責任取られるのは嫌よ?!」
「キラ…」
「だ、大丈夫よ。見逃してはくれたから」
「んもう…本当、気を付けてよね」
「もちろん」
にっこり笑ったキラを見て、キャリーは大仰なため息をついた。
キラが夜に部屋を抜け出して禁じられた森付近を散策するようになったのはここ二年ほど。
早朝にも立ち入ることはあるのだが、夜にしか見つけられない薬草があるのだと熱弁し、止める二人を押し切って足しげく通っていた。
三か月ほどですぐにスラグホーンに見つかってしまったのだが、彼も研究者としての欲を理解してくれたため、許可は出ないにしても黙認して貰えた。
これがマクゴナガルやフィルチであれば大問題になっていただろう。
そしてその夜。
キラはまた部屋を抜け出した。