第21章 第二部 再会
(贔屓してもらおうなんて、思ってないし……!!)
いや、実際は少し、若干、心持ち、思っていた。
調合器具の貸し出しや、教室の使用許可、それからあわよくば禁じられた森への接近など。
スラグホーンのときと同様に自由に動けるようにしたかった。
しかしそれよりも、単純に。
(会えて、嬉しかったのに)
廊下を走り抜けながら、キラは潤みそうになる目を擦った。
少しくらい、再会を喜んでくれると思ったのに。
寮に戻ったキラは部屋に入るなりキャリーとアニーに泣きついた。
聞いてよ!と鼻をグズグズ言わせながら先程のことを話すと、二人は顔を見合わせる。
「何を今更…あの人、元々そんな人じゃなかったかしら」
「うん…キラが一番良く知ってるでしょう…?」
「むしろ、懐かしいな、元気だったか?って笑顔で言われた方が衝撃よ。天地がひっくり返るわ。あなたの先生はそんな良い人じゃなかったもの」
「……」
そう言われれば、そうだったかも知れない――キラの中で、セブルス·スネイプという人物は初恋の相手で。
いつも自分を導いてくれる先輩で。
厳しかったけれど、英語がまだ辿々しいキラにも解るように説明してくれる根気強い人で。
「キラ…それは思い出を美化しすぎよ」
酷い言われようだ。
「あれが、普通…」
「少なくとも、思い出に浸るタイプではないと思うわ。ね、アニー」
「うん…」
「…そっか…そうだったよね」
初恋の人は、とても素敵な人だった――そう、思いたかったのかもしれない。
最後にちゃんと挨拶が出来なかったことも一因だろう。
「それにしても。スラグホーン教授はどうしてこんなに突然お辞めになったのかしらね」
「送別会とか…しそうだよね…」
「確かに」
「もうそんなお年だったのかしら」
キャリーの言葉にキラは首を傾げる。
スラグホーンは祖母と同い年のはずだ。
マグルであれば高齢と言っていいかもしれないが、魔法使いの中で言えばそうでもない、と思う。