第21章 第二部 再会
職員室への扉をノックして、中を覗き込む。
手前の方にお目当ての黒い後ろ姿を見つけて、キラは室内へと入っていった。
「スネイプ教授。スリザリン監督生のキラ・ミズキです」
背中に声をかけると、彼が振り返る。
バチリ、と目が合ってキラは息を呑んだ。
顔色は相変わらず悪くて、鉤鼻、肩にかかるほどのべったりとした黒い髪。
(セブルス、だ)
記憶の中の彼と違うのは、制服ではなく肩パッドの入っていそうなかっちりとした私服と、昔より随分とくっきりとした眉間の皺、くらいだろうか。
「…キラか」
乾いた唇から、自分の名前が紡がれた。
(一応覚えてはくれているみたいね)
「……お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「あぁ。随分優秀な生徒だと聞いている」
「…ありがとうございます。懇意にして下さった上級生の方のおかげかと」
「フン…。それで、何の用だ」
冷たい態度は懐かしくもあり、物足りなくもあった。
自分だけが過去の思い出を大切にしていたみたいで、彼には何の感慨もないようで。
「――新任の寮監にご挨拶にと」
「…そうか。ではもう用は済んだな」
そう言って背を向けようとするセブルスにキラは慌てた。
「えっ」
「そもそもお前が挨拶に来る必要はない。名前も顔も一致している。ピース·マローンが来るのであればわかるが」
眉間に皺を寄せてセブルスが面倒くさそうに言う。
「……彼は私と教授が旧知であることを知っていたので、気を利かせてくれたんです。積もる話もあるだろう、って」
「話などない」
「え……」
ややかぶせ気味に放たれた言葉に、キラは目を見張った。
「ミスミズキ。2年前とは立場が違う。贔屓などしない」
「は…?」
「もう用は済んだだろう」
セブルスは羊皮紙の束を手に、職員室の奥へ進んでいく。
思わず一歩踏み出そうとしたが、フィルチがこちらをじっと見ていることに気づいてキラは逃げるように職員室から飛び出した。