第21章 第二部 再会
『君はここを卒業した後、どうするつもりなのかね』
ブルーム家を継ぐのが一番良いと私は思うがね、とスラグホーンが丸いお腹を撫でながら言う。
『もちろん、研究院に行くのも良いだろう。ダモクレスと連絡は取っているんだろう?』
『はい。お誘いも頂いているんですが…』
『何か他にやりたいことでも?』
じっと細い瞳に見つめられて、キラは一旦下げた視線を再びスラグホーンに戻した。
『私…ホグワーツで教師をやりたいんです』
『――ほぉ』
『院のことも勿論考えましたが…』
その道は何だか違う気がしてならない。
ダモクレスの脱狼薬の研究を手伝ってはいるが、それはキラ自身の目標ではないし、それ以外でこれを研究したい、というのも浮かばない。
既存薬を改良するのは楽しいと思うが、何か新たな薬を、というのは自分にはできないだろう。
マグル生まれの自分には、正直なところ魔法界の薬には存在意義の分らないものも沢山あって理解に苦しむ。
かと言ってブルーム家を継げば、魔法薬学からは離れることになるだろう。
薬草学が嫌いなわけではないが、やはり薬の調合自体は好きなのだ。
魔法薬を売るという仕事もある。
けれど。
自分がなりたい大人は。
『ミネルバのようになりたいかね』
『――はい』
『それに…教師になれば、禁じられた森へ入れるから、だろう?』
校則違反スレスレの範囲にキラが度々足を運んでいるのをスラグホーンは知っているぞ、とばかりに笑う。
『一番の狙いはそれかね』
『……』
キラは笑みを深めた。
禁じられた森にはまだ見ぬ草花が自生している。
それは一体どんなものなのか。
採取して、栽培してみたい。
『ホッホッホッ。まぁ良い。しかし卒業してすぐに、というのは教師としては経験が無さ過ぎる。スリザリンの寮監も務めねばなるまい。二年ほどはダモクレスのところで揉まれて来なさい。君が教員試験に合格するまではこの椅子を温めておいてあげよう』
そんな約束をしていたのに。