第4章 近づく距離
そして迎えた魔法薬学の授業。
キラたちはドキドキしながら席についていた。
大鍋、秤、小型ナイフにピンセット。
薬研まで各机に配置されているのを見て、キラは心をときめかせる。
祖母が魔法薬をたまに作っているのは見ていたが、一度も作らせて貰ったことはなかったのだ。
ガチャリと扉が開き、地下牢教室の石畳の床がコツコツと鳴る。
視線を向けると、セイウチのような髭が特徴的なスラグホーンが丸いお腹を撫でながら教壇へ上がっていく。
「おはよう、生徒諸君。私はホラス・スラグホーン。魔法薬学を担当する。さて、君たちはスリザリンと…グリフィンドールだね。ふむ…」
スラグホーンは名簿に目を通してから、一人の生徒に声をかけた。
「ジョージ・カルロー、お父上のエイムズはお元気かね? 魔法省での活躍は私の耳にも届いておるよ。クィディッチのチームでは確か…そう、キャプテンをしておったな」
「は、はい、元気です」
「それから…おぉ、アニタ・カドワース、君の兄上と、キャロル・ヘンリンソン、君の姉上。二人は本当に優秀だ。スリザリン監督生であり主席、これはとても名誉なことだ。二人とも自慢の教え子だよ。将来が楽しみで仕方が無い。君たちも後に続けるよう努力したまえ」
二人は緊張した面持ちで、はい、と返事をした。
それから数人にも声をかけ、スラグホーンは最後にキラを見て、ほっほう、と感嘆の声をあげた。
キラはわざとらしい、と思いながら、何を言われるのかと身構える。
「キラ・ミズキ。君を見ると、自身の学生時代を思い出すよ。君のお祖母さま、セシリー・ブルームとは同級生だった…。私はスリザリン、彼女はレイブンクロー。寮は違えども、合同授業の後にはよく議論を交わした。二人で教科書よりも優れた魔法薬を作ろうと躍起になったものだ」
スラグホーンはキラのエメラルドグリーンの瞳を見つめて、懐かしそうに思い出を語る。