第20章 それは確かな
「歩き方も変わった気がするわ。頑張ったのね」
キャリーに褒められてキラは恥かしそうに首を竦めた。
「先生の目がないところでダラけないように見張っていて差し上げてよ? ね、アニー」
「あ、うん…」
キャリーの最上級の笑顔に、アニーとキラの顔は引きつった。
スラグホーン教授は、キラが自主研究をしたいので空いているときは教室を使う許可が欲しいと言えばすぐに快諾してくれた。
ただし、教授が準備室にいるときのみでダモクレスのやっていたような新薬の開発は不可、事前に何を作るか申請し、材料も自分で用意しなくてはならない、ということだった。
材料の取り寄せを頼むことは可能だが、自費となるのでキラは早速両親に手紙を書くことにした。
必要な金額を都度送ってもらえるようにしなくてはならない。
便箋を持ってキラは図書室へ向かった。
「あ……」
図書室の一番奥。
滅多に人が来ないその席に、誰かが座っている。
いつも自分が座っている席ではなく、その向かいの席に。
(セブルスじゃ…ない、よね)
彼とは全然違う柔らかそうなブロンドの髪をさらりと書き上げながら、その男子生徒は本を読んでいた。
頬杖をついていた彼が、キラの視線に気がついて面を上げた。
キラを確認すると、すぐに白い歯を見せてにこりと笑いかけてきた。
レイブンクローのネクタイがちらりと見える。
セブルスとは似ても似つかぬ生徒に罪などないのだが、キラはとてもショックを受けた。
(嫌だ…! そこは、セブルスの席なのに!!)
キラは身を翻して図書室を出て行った。
あの席は別に彼専用の席なんかじゃない、と頭ではわかっていても、物凄く嫌だった。
逃げるように走って、キラはスリザリンの寮に戻ってきた。
今まで誰も、席が空いているからといってそこに座っている人を見たことが無かった。
そこはいつでもセブルスの席だったから。
別の人が座っているところを見たことがなかったから。