第20章 それは確かな
9と3/4線のホームに汽車が吸い込まれるように入ってくる。
「行ってきます、曾おばあ様」
「いってらっしゃい。クリスマスにまたおいで」
「はい」
「風邪引いたりしないようにね」
「キラからの手紙、待ってるよ」
「うん。お母さん、お父さん、行ってきます」
にこにこと笑って手を振り、キラはホグワーツ特急に乗り込んだ。
汽車の下からの風を受けて、胸元まで伸びた黒髪がなびく。
紫がかった赤いリボンがよく映えている。
桜と藤の花の刺繍がお気に入りだ。
夏休み、祖母の友人から貰ったものである。
いくつかのコンパートメントを覗いていると、前からキャリーがやってくるのが見えた。
久しぶりの再会に、二人ははしゃぎながらアニーの待つコンパートメントへ向かった。
この夏はキラにとって驚きと発見、そして奇妙なことの連続で、キャリーたちに手紙は書いていたが話したいことが沢山ある。
キラは様々な令嬢としての教養を身に着けるため、夏休みの半分以上がブルームの別邸にほぼ缶詰めだったのだ。
夏休み前半に日本には戻っていたので、そこでトランク一杯にお菓子を買ってきた。
キャリーたちとそれを食べながら、ブルーム邸での出来事を話したりバカンスの話を聞いたりして移動時間を過ごす。
セストラルの馬車に乗り、ホグワーツ城へ近づいてくると毎度、自然と背中がピンと伸びてくる。
また一年、頑張らなくてはという思いが強くなるのだ。
その日のホグワーツ城内部の天気はなぜか雷鳴轟く嵐。
一年生たちが恐々とあちらこちらを見回しているのを、キラは懐かしい気持ちで見ていた。
(去年も懐かしい、って思ってたんだよね)
新学年が始まる。
今年度から選択科目というものがあり、キラは必須授業である変身術、薬草学、魔法史、呪文学、闇の魔術に対する防衛術、天文学、魔法薬学の他に魔法生物飼育学と古代ルーン文字学を選択した。
キャリーは占い学と古代ルーン文字学を、アニーは占い学と魔法生物飼育学を取った。
一人ぼっちになることはないのでアニーが多いに喜んでいた。