第20章 それは確かな
大勢の生徒がいる前で、ジェームズのプロポーズに何の迷いもなく頷いたリリー。
彼女はとても幸せそうに笑っていた。
「……っ…」
一瞬、自分が立っている場所が揺れたのかと思った。
ぐにゃりと世界が歪んだような気がして、セブルスはフラフラとホグワーツ特急に乗り込んだ。
何も見たくない。
聞きたくない。
外が明るくて、煩くて、コンパートメントの窓を締める。
それと同時に、セブルスはコンパートメントに人避けの魔法をかけた。
グラエムを見送りに来たキャリーとアニーだったが、最後はイザドラと二人きりにしてあげよう、ということでキラを探した。
さっきまで随分と賑やかだったようだが、特急の出る時間が近づいてきたので人もまばらになってきていた。
ホグワーツ特急の前で立ち竦むキラの後ろ姿が、それはそれは小さく見えた。
そんな彼女にキャリーとアニーが駆け寄る。
「キラ! 見つけられたの?」
「ううん…」
「もうちょっとで特急が出ちゃう…」
「きっともう乗ってるんだわ。入って確認しましょう!」
途方に暮れているキラを引っ張って、キャリーが走り出す。
先頭車両に乗り込もうとして、車掌に止められる。
「もうすぐ発車しますので、離れてください」
「仕方ないわね、窓を覗くしかないわ」
「うん!」
しかし、セブルスを見つけることができないまま、シュー…と汽車が煙を吐き出した。
ゆっくりと動き出す車軸。
「あ…!」
誰かが窓から顔を覗かせている。
キラは大きな期待を胸に走り出した。
「キラー! 元気でねー!」
「はい!! ダモクレスも、元気で!!」
きっとその横に、彼がいる。