第20章 それは確かな
卒業式の日は、珍しいことに快晴だった。
ホグワーツ城の広間は魔法で天気が変わるようになっていたので、外に出るまで本当の天気がどうだか知ることはできない。
大広間に卒業生、在校生全員が集まって式が執り行われ、卒業生の退場が終わると在校生もぞろぞろと寮へ戻って行った。
スリザリン寮の入り口の前で、花挿し役の生徒――キャリーの姉、イザドラが控える。
トランクを持って卒業生が順番に寮を出て行く。
背の低いキラは、周りの上級生に阻まれてセブルスとダモクレスの姿を見ることはできなかった。
寮から出たキラは急いで見送り用の馬車にキャリーとアニーと一緒に乗り込む。
アニーの兄であるグラエムも卒業なので、一緒に見送ることになっていた。
「…晴れてるなんて、珍しいわね」
「門出にはぴったりだよね…」
二人のそんな他愛のない話など耳にも入らないキラはハラハラと窓の外を見ていた。
(セブルスとダモクレスが特急に乗っちゃう前に会えるかな…)
自分だったら、仲の良かった後輩がいたら会えるまで特急に乗らずに待つと思う。
けれど、セブルスはきっと待ってくれない。
(昨日ので十分だ、って思ってる…。というか、何も考えてないかも)
挨拶をしたいから待っていて欲しいと伝えれば良かった、とキラは後悔した。
ホグズミード駅に到着するや否や、キラは転がるように馬車から飛び出した。
「あ、キラ…!」
友人の呼びかけに振り向きもせず、一目散に駆け出す。
キラたちの馬車は最後尾に近かったようで、多くの生徒がひしめいているのをかき分けながらキラは目当ての二人を探す。
(ああ、もう…全然見えない!)
卒業生も在校生も入り混じっている上、皆制服のまま。
キラの背の低さもあって、セブルスとダモクレスの姿を見つけることができない。
右往左往している間にも、卒業生が少しずつ特急に乗り込んで行っているようだった。
(どうしよう…もう中に入っちゃったのかな…?!)
焦ったキラがホグワーツ特急に近寄ろうと、思ったときだった。