第20章 それは確かな
たった二年の歳月で、二人の存在はこんなにも自分の心を占めていたのか、とキラは思った。
まさかこんなに涙が出て、寂しくて、悲しくなるなんて想像もしていなかった。
もちろん、寂しいだろうなぁ、とは思っていたけれど、ここまでとは。
どうやったらこの涙が止まるのだろう、とキラは必死で目元を拭う。
けれど中々止まってくれない。
(ど、どうしよう…セブルスがハグなんかするから…)
俯いていたキラには見えていなかったが、彼女が泣き止むのを待つことにしたセブルスとダモクレスは、受け取ったお守りをじっと観察し始めた。
そして、疑問を口にする。
「これは、何か入ってるのー?」
「え?」
突然の質問に、キラは驚いて顔を上げた。
小さな袋状のそれ。
引っ張ってくれと言わんばかりの白い紐。
「見ればわかるだろう」
セブルスがその紐を解こうとしているのを見て、キラは慌てた。
「わあぁ! ダメです!! それは開けないで下さい!」
「ええ? ダメなの?」
「ダメ!です!」
「何故だ」
「な、なんでって――」
お守りを開ける、なんて考えたこともなかったキラはその理由など知りもしない。
ダメな理由なんて知らないけど、お守りは開けるものじゃない。
「あ、開けたらお守りの効力が飛んでっちゃいます!」
「そういうものなの?」
「ににに、日本のお守りはそういうものです!」
知らないけど、とキラは心の中で付け足した。
「そっかー。ふふふ、涙引っ込んだ?」
必死な様子のキラに視線を合わせるため、ダモクレスが屈んでくれる。
「え…あ、はい」
目元に触れると、もう涙は乾いていた。
「行くぞ」
縮小魔法で小さくしたテーブルセットをセブルスはいつもの場所に置いた。
その行動を目で追っていることに気づいたダモクレスが、キラの肩を叩く。
「置いていくから、好きなように使いなよ。キャリーたち誘ってさー」
「…はい」
「忘れ物はないか」
「ないよー。セブルスは心配性だねー」
「……」
鬱陶しそうに眉を顰めるセブルスに、キラはくすくすと笑った。