第20章 それは確かな
一体なんだと言うのだろうか。
「んーとねー、キラに、プレゼントっていうかー。何か、渡せたらいいなーって」
「…調合器具をか?」
「うん。キラってまだそんなに持ってないじゃなーい? それでー、俺たちが使ってるのをあげたらいいかなーって」
「使い古しを?」
「それがいいんじゃーん」
「……」
セブルスにはよくわからなかったが、匙一本くらいなら問題ない。
「きっとキラ、喜んでくれるよー。ネクタイだと、さすがに意味深だしね」
「どういう意味だ」
「えっ…セブルス、まさか知らない…?!」
「何のことだ」
「おお。疎いとは思ってたけどここまでとはっ!」
聞けば、元々好意を寄せる相手とネクタイを交換する、という風習のようなものがあるらしい。
そこから、憧れの卒業生からネクタイを貰う、というケースも増えているということなのだが、セブルスには全く縁の無い話だった。
「ネクタイなど一つあれば十分だろう」
「うん…そう、そうなんだけどさー…」
ダモクレスは二本ネクタイを持っている。
いずれもお付き合いしていた上級生が卒業時にダモクレスに置いていったものである。
「匙は今日渡すのか?」
「え、ああ、うん。そーだね。卒業式の日じゃ渡せるタイミングないかもしれないしー」
「そうか」
匙を渡すだけだ、包装も必要ないだろう。
セブルスはそう考えていたのに。
「っじゃーーーん! キラ! プレゼントだよー!」
「えっ?! いいんですか?!」
「……」
翌日、温室に入ってすぐの第一声だった。
いつの間に用意していたのか、ダモクレスはモスグリーンの包み紙で丁寧に匙を包んでいた。
キラはそれをまた丁寧に破かないようにと広げ、中から出てきた木の匙に目を丸くする。
「これ…ダモクレスの…」
「よく覚えてたねー。これあげるから、これからも魔法薬学頑張って! そんで、俺のいるとこにおいでよー」
「ありがとうございます…!」
キラがぎゅっと木の匙を握り締めて嬉しそうに笑う。
なんとなく面白くない。
「キラ」
呼びかけてこちらに振り向かせる。
「はい」