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【HP】月下美人

第20章 それは確かな


 教師になれるだけの実力は十分ある、と自負している。
 馬鹿に教えるのは大嫌いだが、それも仕方ない。
 別に、生徒の成績を上げるのが自分の目的ではないのだ。
 そのときが来るまでは仮初めの教師であればいいのだから。
(…キラは、そのとき…まだここにいるだろうか)
 彼女は九月で三年生になる。
 ということは、あと五年はホグワーツに在籍している。
 五年もあれば、自分はここに戻って来ているかもしれない。
(キラが、生徒?)
 それはそれで変な感じがする。
 もちろん彼女には魔法薬学以外にも様々な魔法を教えた。
 彼女は勤勉だったし、セブルスを色眼鏡で見たりしない。
 それは彼女がほぼマグルで、何も知らなかっただけだったけれど。

 窓の外を覗いてみる。
 クィディッチの練習をしているのか、箒に乗って飛び回る生徒の姿が見えた。
 気づけば夕暮れ時。
 太陽の朱色が目に痛々しい。
 ズズズ…とまるで音がするかのような圧迫感を持って徐々に沈んでいく。
 時間にしてほんの数秒。
 けれど、ひどく長い間見つめていたのかと思うほど、目を背けて歩き出したセブルスの瞼に燃える太陽がこびりついた。

 寮の部屋は随分片付いた。
 七年もいれば荷物はだいぶ増えるものだな、と思いながら片付けを始めたところ、半分近くダモクレスの私物だった。
 置き場所がなくなってセブルスのところにこっそり荷物を置いていたらしい。
『ちょっとの間だけ、って思ったんだけどー、セブルス、気づいてなかったからー、いいかなーって』
『……』
『ごめんってー。反省してるよー』
『……』
 不毛な言い争いには発展しなかったが、ダモクレスの言い訳をしばらく聞かなくてはならなかった。

 迎えた翌朝。
 朝食のオートミールをぼんやり見つめていたダモクレスが突然立ち上がる。
「いいこと思いついたー!」
「…うるさい」
 食事中に騒ぐな、という気持ちを込めてダモクレスを睨んだが効果はほとんどなかった。
「ねーねーセブルス。今後、すぐに調合器具って使う? 使わないよね?」
「…決め付けるな」
 卒業してすぐに取り掛かる仕事は真実薬を作ることだったはず。

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