• テキストサイズ

【HP】月下美人

第20章 それは確かな


 しかしキラ・ミズキという存在は随分自然とセブルスの傍に馴染んだ気がする。
 彼女はマグルなのに。
 あのエメラルドグリーンの瞳を見ると、リリーのことが思い出されて気持ちが昂ぶるが、彼女の黒髪が揺れれば激しく触れた感情の波が凪いでいくような気もした。

「あ、あの…?」

 あまりにじっと見つめすぎていたからなのか、キラは恥かしそうにこちらを見上げていた。
「な、何か顔についてるでしょうか…」
「いや」
「えと…」
 揺れる瞳を見ながら、セブルスはあることを思い出した。
「…実験は失敗だった、とダモクレスが言っていた」
「え、あ…そうですか」
 満月になるその夜、変身する前にポリジュース薬を飲んでみた人はいるのだろうか?という疑問がキラにはあった。
 それを受けて、ダモクレスは即座に研究院に手紙を書いたらしかった。
 すると、それは試したことがないということだったので、一度試してもらうことになったのだ。
「やっぱりダメでしたか」
「薬自体は効果があって、他人の姿になった。しかし、凶暴性はそのまま。自我は無くなり、ポリジュース薬を続けて飲むこともできなかったために結局は……」
「…そうですか」
 つまり、体の変化を止めたところで、自我が無くなり他に危害を加えてしまうという性質は変わらない、ということだった。
「詳しい話は明日だ」
「あ…はい」
 こくり、とキラが頷けばセブルスは満足げな顔をして図書室を出て行った。
「……」
 キラは少し考えた後、再び席へ戻って一度は諦めた読書に挑んだ。
(…なんだろう? なんか、落ち着いた感じ)
 先ほどまで気が散って仕方が無かったのに、アルファベットの文字列がスルスルと目に飛び込んでくるようになった。







 石畳の回廊を歩く。
 コツ、コツ、と靴音が響いているのが心地良い。
 図書室には随分通った。
 さすがに全部の書籍に目を通してはいないが、闇の魔術関連はほぼ読みつくしただろう。
 ルシウスの手引きで閲覧禁止のものも読んだくらいだ。
(…いつ、戻ってくることになるのだろうか)
 ホグワーツに教師として潜入せよ、という話はまだ具体的な計画ではないらしかった。

/ 347ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp