第20章 それは確かな
(花を挿す役目が出来たらよかったんだけどな…)
卒業生に花を挿すのは六年生の役目だった。
そこを惜しんでも詮無いことではあるが、キラは残念に思う。
(日曜日に渡すのが一番良いよね)
日本から事前に取り寄せた、緑色のお守りが頭に思い浮かぶ。
あれこれ考えて"無病息災"を祈るものにした。
セブルスの進む道は、厳しいものらしいから。
ダモクレスには、"学業成就"だ。
研究のことを学業としていいのかどうかわからないが、きっとこれが一番近いだろう、という判断である。
「試験終了です。ペンを置いて」
マクゴナガル教授が杖を一振りすれば、解答用紙が頭上高く浮かび上がる。
もう一度杖を振れば、寮ごとに一まとめになって教卓の上にドサリ、と落ちた。
「お疲れ様でした。試験の結果は、去年と同じく梟便にて発送します」
解答用紙を小脇に抱えて、マクゴナガル教授は試験会場を出て行った。
途端、あちこちから張り詰めていたものが途切れるようなため息があがる。
それはキラも同じで、ついつい両手を上に上げて伸びをしてしまう。
「キラ! 一番最後の問題って、答えはイラクサで良かったかしら?」
「イラクサの根っこ、まで書かないとダメだよ」
「え…?!」
キャリーの質問に答えれば、アニーが絶句した。
「イラクサ、までしか書いてない…」
「あー…半分点数がもらえたらいいね」
「ショック…」
しょげるアニーに同情しながら、キラたちは試験会場となっていた広間を後にした。
廊下を歩きながら、キャリーが夏のバカンスについて話し出す。
「今年は日本に行きたい!って言ってみたんだけど、ダメだったわ。靴を脱ぐ文化に耐えられないんですって。まぁ、私もそこに関してはちょっと考えなくてはならないと思っていたわ」
「そういうものなの?」
「そうだね…靴を脱ぐのはちょっとね…」
ベッドに上がるときさえ靴を履いたまま、ということが少なくないので、こちらの人は靴を脱ぐ、という行為に抵抗があるらしい。
セブルスもダモクレスも、ゴザに上がるのを渋っていたっけ、と思い返す。