第20章 それは確かな
試験の解答用紙の最後の欄を埋めて、キラはガラスペンを置いた。
(後はスペルチェックだけ…)
教卓にある砂時計は試験終了まで残りおよそ十分を示している。
大広間よりも一回り小さなホールに机と椅子が運び込まれ、等間隔に並べられていた。
今まさに生徒はそこに座って解答用紙と必死ににらめっこしている。
試験の結果がすぐ分からないと言うのは随分不安なもので、進級時に必要な教科書リストなどと一緒に成績表が届くまで悶々としなくてはならない。
もちろん、試験結果など見たくも無い者に取っては嫌なことを忘れられるし、夏休み中目一杯親にくどくど説教されることもないのだろうが、キラはどちらかというと早く結果を知りたいタイプであった。
(あ…ここ、引っ掛け問題だ…)
ミスを一つ見つけて、キラはほっとする。
残り三分。
見直しも終わったキラはただじっと砂時計を見つめる。
この試験が終わったら、もう修了式がやってくる。
(卒業式まで、あと四日…)
今日は金曜日。
明後日が温室で三人で過ごす最後の日曜日となる。
セブルスへの卒業祝いをいつ渡すのか、キラは悩んでいた。
卒業式の後、卒業生は寮の荷物を引き上げてホグワーツ城を後にする。
その際、下級生たちは寮の談話室で卒業生を送りだすという習慣がある。
他の寮がどのような感じなのかはわからないが、スリザリンでは下級生が寮の出入り口で待機し、そこを通る卒業生一人一人の胸ポケットに花を挿していくのだ。
そのため、その間は下級生たちは寮を出ることができない。
城を出て行く卒業生を追いかけるには、卒業生全員が寮を出てからでなくてはならない。
セブルスは感慨深くいつまでもホグワーツ城を眺めているような人間ではないので、きっとすぐにセストラルが引く馬車に乗ってしまうだろう。
セストラルの馬車が出発するのは一斉なのだが、一つ一つどの馬車に乗っているか確認するわけにもいかない。
下級生の見送りは許可されているので、下級生用の馬車に乗り込んでホグズミード駅に行き、駅でセブルスが特急に乗り込む前に捕まえなくてはならないと思われる。