第19章 目指す道
「バケツと桶だなんて、どうやってシャワーを浴びてるのか不思議でならないわ」
(だって足元寒いし…)
イギリス生活が二年経っても、日本の入浴スタイルから抜け出せないキラだった。
キラとキャリーの会話を聞いて、久しぶりにシャワーを浴びるか、とセブルスは思い立った。
と言うのも、読んでいた本が先ほど最後のページを迎え、就寝時間までのおよそ二十分を持て余したためだった。
スリザリンの寮を出て、シャワー室へ向かう。
手にしているのは着替えと泡立ちの悪い粉石鹸と杖だけ。
と、女子用の入り口からキラが出てくるのが見えた。
(…洗濯でもしていたのか?)
それほど、キラの荷物は多かった。
両腕で輪を作ったくらいのバケツとバスタオルを腕にひっかけ、何かボトルのようなものを入れた洗面器を抱えている。
髪で服が濡れるからだろう、肩にもタオルをかけている。
バケツの中にも何か入っているのか、ガチャガチャと音を立てながらこちらに歩いてくる。
「あ、セブルス。今からシャワーですか?」
「ああ…。随分遅かったんだな」
「え?」
「ヘンリンソンに急かされていただろう。すぐにシャワーに行かなかったのか」
「行きましたよ? あの後、部屋に戻って準備してすぐに」
「……一時間以上経っていないか」
「ええ、まぁ、経ってますね」
「……」
「い、いいじゃないですか、ゆっくり入ったって…」
「いや、洗濯でもしていたのかと思ったんだが」
「洗濯? 洗濯は皆と同じようにクリーニングですよ」
ホグワーツの屋敷しもべ妖精は洗濯もしてくれる。
寮の自室の前に出しておけば、洗濯をして畳んだ状態でベッドサイドに置いておいてくれる。
どうしてそれがキラのものだとわかるのかは分からないが、屋敷しもべ妖精が洗濯物を取り違えることはない。
「…では、その大荷物はなんだ?」
「あ、これですか?」
このバケツはですね…とキラが持っていた荷物を足元に下ろす。
キラはバケツを二つ、洗面器を一つ持っていた。
一番大きなバケツにお湯を溜めて足を突っ込む。