第19章 目指す道
「あの二人が卒業したら、私達がキラを独占するんだから!」
キャリーの物言いに思わずキラは笑った。
コツコツと音を立てながら石畳みの廊下を歩いていく。
さすがに夜になるとまだ冷える。
「今日は二人はシャワー行かないの?」
「一昨日行ったからいいわ」
「あたしも、今日は行かない…」
「そ、そっか」
「本当に日本人はそんなにしょっちゅうシャワーを浴びるの?」
「しょっちゅうって…」
二日に一回は入りたいところを、三日に一回で我慢しているのにこの言われよう。
キラは何ともいえない気持ちになる。
一週間に一回しかシャワーを浴びないなんて、無理だ。
「大体、魔法で綺麗にできるのにどうして?」
「それは…気持ちの問題というか、なんというか」
魔法使いの血筋の子どもは、魔法がある程度制御できるようになる二年生になったくらいから、清潔魔法――とキラは呼んでいる――で体の清浄を保つのだという。
授業では教えてもらえないのだが、マグル生まれは周りから教えてもらって呪文を唱えるようになる。
キラもキャリーから教えてもらってはいたが、それで汚れが落ちたような気がしない。
ゴミやベタついた汗は綺麗になるが、どうも皮脂は綺麗に除去できないようなのだ。
それはセブルスを見る限り当たっていると思われるし、べったりとした髪の毛の生徒は他にもたくさんいた。
(ちゃんとシャンプーとリンスを毎日…毎日じゃなくても二日に一回したら変わるのに…)
こちらの水は日本と違って、髪の毛を洗うとやたらとキシキシする。
二日に一回のペースでシャワーを浴びていたら髪の毛が物凄く痛んだので三日に一回にした。
杏油でケアしているが、日本に居た頃の手触りとはやっぱり違う。
(お風呂が恋しい…)
魔法で温泉を掘り当てることはできないだろうか、と思ってしまう。
「どっちにしろ、あなたのシャワーにかける時間は異常だわ」
「そうかなぁ」
「荷物も多いしね…」
アニーが小首を傾げる。
「それは…否定しないけど…」
だって。
(石鹸一つで髪も顔も体も洗ってハイ終わり、なんて無理だから…!)