第19章 目指す道
「待っ」
ダモクレスの咀嚼と嚥下を待たずに、アニーは彼の口の中にポークリブを詰め込む。
「アニーが怒ってるの、久しぶりに見た気がするわ…」
キャリーはそう言って、自身の握り締めた拳を緩めた。
自分よりもアニーが怒っていることを知ると、何だか熱が冷めたのだ。
ダモクレスは目を白黒させて、セブルスに助けを求めるが当然知らん振りである。
アニーは無表情でダモクレスの口にポークリブを詰め込もうとフォークを動かす手を止めようとしない。
「あ、アニー、そろそろいいんじゃないかな…」
手をバタバタと動かし、苦しそうに鼻の穴を広げているダモクレス。
窒息してしまいそうだ。
「……ちょっと残っちゃった…」
切り分けたポークリブを見て、アニーがそう呟く。
「わ、私が食べるから…!」
キラは慌ててお皿を引き寄せる。
いつの間に食べ終えたのか、セブルスはすでに紅茶タイムに入っていたが、ダモクレスはいまだに頬をパンパンに膨らませたままであった。
キラがとうもろこしを食べ切り、細切れになったポークリブを食べきるのを見届けてから、キャリーは立ち上がる。
ダモクレスがようやくとうもろこしに手をつけた頃だった。
「キラ、寮に戻りましょう。今日もシャワーに行くんでしょう?」
「う、うん」
「時間がかかるんだから、早くしないと就寝時間に間に合わなくなるわよ」
「え、もうそんな時間?」
「ええ。別に、あなたのシャワータイムが短ければ問題はないのだけれど」
「だって…」
シャンプーしてリンスして体洗って、なんて5分や10分では難しい。
キラはダモクレスとセブルスにペコリと頭を下げる。
「それじゃ、失礼します」
「ああ」
「ごめんねー」
「…今度から気をつけてくださいね」
「てへっ……あー、ごめんなさい」
ふざけようとしたダモクレスが、アニーの微笑みを見て態度を変えた。
(アニーも怖い…)
中々に気の強い二人に挟まれながら、キラは寮への道を歩き出す。
「心配かけてごめんね」
「もうすぐ二人とも卒業だもの。長く一緒に居たい気持ちもわかってるつもりよ」
「うん…ありがとう」