第19章 目指す道
キャリーとアニーはデザートも食べ終え、紅茶をゆっくりと啜っている。
それで?と言ったようにキャリーが視線を寄越してくるので、ダモクレスはへらっと笑う。
「俺たちの分まで食事取っておいてくれてあり」
「どういたしまして」
「がとー…」
食い気味というより、完全に途中でぶった切ってキャリーがにっこり笑う。
(おお…スリザリンっぽい!)
なんだかキャリーが格好良い。
「そんなに皆して怒らなくてもいいでしょー」
ぷぅ、とほっぺたを膨らませる様子に彼を殴りたくなったのは一人ではなかっただろう。
「新作の眠り薬なんだよー。液体のままでも使えるんだけど、揮発性を高めてて。眠らせたい相手の前で零すだけでも効果があるんだ。もちろん風向きとかも考慮しなくちゃいけないけどー」
「え…それって…」
(どう考えても悪巧み用の眠り薬だよね…!)
眠れないときに飲むものではなく、誰かを眠らせるための薬。
しかも、使い方によってはかなり大勢の人を巻き込むことができる。
「……それは依頼を受けて作ったのか?」
「いや? 面白そうだなーって思ってー」
「…ダモクレス、その薬は実用には向きませんよ」
「えー?」
やんわり言ってみるが、通じない。
「悪用される可能性が高いってことですよ!全く、キラまで巻き込んで何考えてるんですか!」
キッとダモクレスを睨みつけるキャリーの横で、気づけばアニーがポークリブを一生懸命切り分けていた。
(お腹減ったのかな…?)
「え~。大丈夫だよー」
「どこがですか! キラを実験台に使わないで下さい!」
ドン!!と机にキャリーが拳を叩き付けたとき、ようやくアニーが手を止める。
「Mrベルビィ…」
「んー? どうしたの??」
「口を開けてください…」
「ん?」
ぱかり、と口を開けたダモクレスにアニーが切り分けたポークリブの切れ端を突っ込んだ。
「…んむ?」
むぐむぐと噛んで飲み込む前に、アニーがすかさずポークリブを唇にむぎゅ、と押し当てる。
「アニー? 何をして…」
ダモクレスは押し当てられたポークリブを再び口に入れる。
するとすぐにまた次。
「ちょ、ちょっと待っ…むんっ…」
口を開くとまた次。