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【HP】月下美人

第19章 目指す道


 セブルスはキラの髪の毛に鼻を埋めるように、キラはセブルスの胸元に頬を寄せていた。
「…ワォ。仲良しだねー」
 でもこのままにしてはおけないしー、とダモクレスは二人を揺さぶり起こすことにした。
「せーぶるーす。起きなよー。キラもー」
「ん…ぅん…」
「……」
 二人して同時にキュッと眉間に皺を寄せるのを見て、ダモクレスはぷぷぷ、と笑みを漏らす。
「ほらー、起きてよー。夕ご飯なくなっちゃうよー」
「…ん…」
 先に目を開いたのはセブルスであった。
 鼻をくすぐるアプリコットのかすかな香りが、彼の思考をぼんやりとさせている。
「……ん?」
 と、唐突に意識が浮上する。
 自分の腕の中に何かある。
 パチリと目を開ければ、誰かの頭があった。
 艶々とした黒い髪と、この香り。
「…ダモクレス」
「あ、起きた?」
「あの薬は一体なんだ」
「…えへ」
「答えろ。そして起きろ、キラ」
 キラの体の下敷きになっている右腕が痺れている。
 どれほどの時間眠っていたのか、とセブルスは左ポケットに入れていた懐中時計を見る。
「…夕食の時間ギリギリだな」
「やっぱり! 急ごう!」
「後で追及するからな」
「う……キラーキラー、起きてよー」
 セブルスの怒りの視線を横顔で受け止めながら、ダモクレスはキラを起こすことに集中した。
 のだが。
「うっ…」
「…キラー、起きてー」
 キラを揺さぶる度にセブルスが顔を顰めるのだが、ダモクレスは素知らぬふり。
「おい」
「ん?」
「磔にされたいのか」
「ごめんなさーい」
 へらへらと笑うダモクレスにため息をつく。
「んんん…」
 むにゃむにゃと口が動いてから、そっと瞼が開く。
「…へ」
 眼前にセブルスのアップ。
 キラは一瞬固まった後、え?え?と動揺を隠せない。
「起きたか」
「は、はい…え?」
「ダモクレスの薬のせいで全員眠っていた。とりあえず…体を起こしてくれ」
 セブルスの言葉に、彼の右腕を下敷きにしていたことに気づいたキラは慌てて飛び起きた。
「わあ! ご、ごめんなさい!!」

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