第19章 目指す道
ホグワーツ城に入ったところで、リーマスは友人たちに捕まった。
「リーマス! どこに行ってたんだよ」
「あ、うん、ちょっとね」
「ったく…フィルチのヤツに地図持ってかれてから面倒で仕方ねぇ。やっぱり取り返しに行こうぜ?」
「何言ってるんだい、シリウス。あれはいつか後輩たちが使ってくれるようにわざとフィルチに取らせたんだよ」
「わかってる、わかってるさ。けどよ、もっとギリギリでも良かったんじゃねぇか?」
リーマスを探していた風だったのに、シリウスの意識は完全に手放した忍びの地図へと向けられていた。
「えっと…何か用だった?」
「っと、そうだ! 大変だぜ!」
ガッと両肩をシリウスに捕まれてリーマスは目を瞬かせる。
「な、なにが?」
「ジェームズが、リリーにプロポーズするんだってよ!」
「ええ?! 本当かい、ジェームズ」
リーマスの問いかけにジェームズはフフンと顎を突き出して胸を張る。
「ああ、本当だとも。でもそれは今じゃない。卒業式の日、ホグワーツ特急の前で、だ」
「わぉ。すごいサプライズだね」
「でもよー、NO!って言われたらどうするんだよ? 生徒全員の前で公開プロポーズして失敗って、目も当てられねぇだろ」
シリウスの懸念は最もだ。
リリーの性格なら、「まだ早い」とか何とか言って断られそうな気もする。
しかし、そんな友人たちの不安を払拭するかのようにジェームズはくい、と眼鏡のブリッジを中指で押し上げてにんまり笑った。
「心配ご無用。卒業したら結婚したいなーって言ってあるし。リリーも満更じゃなさそうだった」
「そ、そうなんだ…」
よかったね、おめでとう、の言葉が唇から出て行かない。
こういうときに思い知らされる。
自分が人狼で、普通の人と同じような幸せな人生を送ることができない、ということを。
自分だけが、大きな道から逸れていくようだった。