第19章 目指す道
彼女に浮かんだのは、疎んじるような表情。
リーマスは一瞬怯んだが、自分に向き合おうとする彼女に、何か言わねばと思って焦った。
『やぁ』
その一言が酷く震えていたような気がするのは自分だけだったろうか。
そして、 思わず確かめようとしてしまった。
(本当に、彼女は何も知らないのか?)
気づいたのは、ここ一、二ヶ月の間。
しかし図書室に足をよく運ぶリリーに聞けばもう半年ほど前からだと言う。
彼女、キラ・ミズキが図書室に入りびたり、決まった書架の前にいつもいるということを。
その書架のある本に関しては、おそらく、マダムピンスの次にリーマス自身が詳しいと思っている。
そこは、人狼に関するものが最も多いのだ。
約一年前、いや、もう二年前と言った方が近いのかもしれないが――リーマスは、自分自身に関する最大で最低、最悪の秘密をセブルス・スネイプに知られてしまった。
それ以来、彼がダンブルドア校長から口止めされていることは知っていても、いつか誰かにその秘密を漏らすかもしれない、とリーマスはずっと怯えている。
もし、この秘密を知っていたならば、きっとキラはリーマスと二人きりになること拒むはずだ。
リーマスはそう考えていた。
だから、自分だけが嫌いなのではない、自分たち全員が嫌いなのだと言われたときはほっとした。
彼らと同じ括りとされることが、自分にとってどれだけ安心をもたらすことか。
きっと誰にも理解はできないだろう。
それは、親友の誰であっても、だ。
シリウスの行動にはいつもハラハラさせられている。
自分が人狼であることを、ある意味ポジティブに捉えている彼に救われることも少なくはないが。
『早く満月にならないかな』
シリウスのその言葉に、何度苦い気持ちになってきたか。
おそらくジェームズがいなければ、自分の秘密はとっくにバレているだろうし、シリウスと七年間友人でいることは難しかったかもしれない。
ホグワーツで過ごした年月は、リーマスにとって得難い宝物だ。
10歳の自分は誰の目にも触れないように、と隔離された場所で代わり映えのしない日々をただ数えていた。