第19章 目指す道
温室からホグワーツ城へ戻る途中で、キラは一人の教授を見かけた。
(そういえば、あんまり話したことないなぁ)
グリフィンドールの寮監であるミネルバ・マクゴナガルである。
彼女は他寮の生徒でも分け隔てなく接する厳格な教師の鑑のような人だ。
たしか、ハーフブラッドだったはず。
そのようにスリザリンの誰かが言っていた。
彼女がいくつなのかわからないが、長らく教職についているはずだ。
(そういえば…どうやって先生になるんだろう? 試験とかがあるのかな?)
もちろん、その教科のエキスパートでなければなれないのだろうけれど。
どの先生も学生時代は周りよりもよほど秀でた生徒だったのだろうか、とキラは思う。
(そういえばセブルスって、先生に向いてそう…)
厳しいけれど助言は的確だし、ハードル上げすぎなんじゃないかと思うときはあっても、結局自分はそれを乗り越えてきているから、無理難題ではないのである。
見た目は威厳があるというより、威圧感がある、と言った方が正しいかもしれないけれど、教壇に立つ限りそういうものも必要だろう。
(先生、か…)
自分が小さい頃は、何になりたかったかな。
アイドルの女の子をテレビで見て、あんな風になりたいとマイク型のお菓子のケースを手に真似したこともあったし、ケーキ屋さんになりたいと思ったこともあった。
祖父の跡を継ぐ、というのは考えたこともなかった。
お弟子さんがたくさんいるし、祖父はキラが女の子ということもあってはなからそういう考えを持ってはいないだろう。
今は何になりたいだとか全く思いつかない。
ただ、これまで通りブルーム家の名を汚さないよう、期待に応えられる自分で居たいとは思う。
そのためには、セブルスとダモクレスが居なくなってもしっかりと自分の力で立たなくてはならない。
遠ざかっていくマクゴナガルの後ろ姿は颯爽としていて、それはいつも自分が追いかける後ろ姿に似ている気がした。