第19章 目指す道
「あああ、さすがに疲れました~」
ぼふんっと勢いよくカウチに腰を落として、キラは背もたれにコテンと頭をもたれさせる。
「うまくできたみたいだねー?」
ダモクレスの質問にキラがガバリと身を起こして「はい!」と返事をした。
しかし、それに対してセブルスは不満そうに唇をへの字に曲げるのでダモクレスは不思議に思う。
「あれ? 違うのー?」
「――だいぶ手加減して、だ」
「い、いいじゃないですか! まぐれでもなんでも、成功には違いありませんから」
「フン。明日からは手加減しないからな」
「な…あれで手加減してるとでも言うつもりですか?」
「そうだ」
「えええ?! そ、それならそれで、手加減にも段階があると思いませんか?!」
「うるさい」
じゃれる様な二人のやり取りにダモクレスはくすくす笑いを我慢できなかった。
と、コツコツ、コツコツ、とガラスを叩く音。
キラはその原因に気づいて体を強張らせる。
温室の外に居たのは、セブルスの友人と言われる人たち――あのエイブリーとマルシベールである。
どうやらセブルスに用があるようで、彼は彼らの姿にチラリと視線をやってからすっくと立ち上がった。
「――今日はここまでだ」
「…はい、ありがとうございました」
ペコリと頭を下げて再び顔を上げれば、彼はすでに背中を向けていた。
「いっちゃったねー」
温室を出て行くセブルスを見送りながらダモクレスがぽつりとひとりごちてキラを見れば、妙な顔をしていた。
無表情を装うとして口元が失敗している。
「そんな不満そうな顔しないのー」
「そ、そんな顔してませんよ」
「してるしてる」
「……不満がないわけじゃないですけど…」
だって友達に呼ばれたら、行くものだし。
自分とセブルスの関係は残念ながら彼らより日が浅いし。
「…卒業したら、もう会えないんですよね…。セブルスとも、ダモクレスとも」
後、たったの三ヶ月しかない。
それはきっとあっという間で、瞬く間に過ぎるだろう。
小学校のときは、季節が変わるのをあんなに長く、一日が過ぎるのをとても長く感じていたのに、ホグワーツに来てから日々が過ぎるのがとても早くなったように思う。