第19章 目指す道
薬で随分楽になったけれど、体を休めないことには完治しない。
はぁぁ、とため息をついて寝返りを打っている内に眠りに落ちていった。
温室の中からダモクレスは外を見る。
魔法薬を調合する際に必要なイモリの粉末を作っているのだが、薬研を動かす手は度々止まっていた。
「大丈夫かなー」
いざとなれば、もう一回元気爆発薬を飲めばいいのだけれど。
(あ、また失敗してる…)
ダモクレスの視線の先には、いまだ寒い空の下セブルスと杖を向け合うキラの姿。
キラは一瞬にして水でびっしょり濡れたが、すぐに乾燥呪文で元に戻った。
(他にちょうどいい呪文ないのかなー)
つい昨日、キラは保健室から出てきたばかり。
濡れねずみになったキラにセブルスが長々と講釈を垂れたものだから当然のことだろう。
さっさと乾かしてあげないからいけないのだ。
かわいそうにキラは風邪を引いてしまった。
一昨日の朝、彼女が高熱を出したとキラの友人から聞いたセブルスは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
それでセブルスはその日の授業が終わった後と、昨日の朝早くに保健室に足を運んだようだった。
(自業自得だ、なんて言い訳がましくぶつぶつ言ってたけど)
なんだかんだで妹のように可愛がっているのが良くわかる。
(一生懸命だし…実年齢より幼く見えるし…小動物みたいで可愛いよねー)
再び薬研をゴリゴリと転がし始めるが、またダモクレスの手が止まる。
(お。今、成功したっぽい?)
ガラスの向こう。
ピョンピョン飛び跳ねるキラが見えた。
(もうしばらくしたら戻ってくるかな)
さすがに病み上がりでは、ずっと魔法の特訓も疲れるだろう。
ダモクレスはキラのために持ってきたブランケットをカウチに引っ掛けるため一旦座布団から腰を上げた。
キラが持ち込んだゴザと座布団は、いつのまにか横になるためではなく魔法薬を調合する際に座り込む場所となっていた。
地べたに座り込むよりはよほど良い。
さすがに寝るのはカウチかソファの方が良いけれど。