第19章 目指す道
「ごめん」
「ごめんね…」
昨日、丸一日保健室にいたキラはアニーと共に食事を取っていた。
「で、でも…あの人、キラが寝ている間に様子を見に来てたよ…」
キャリーの気をそらそうとアニーが話題を元に戻す。
「え? そうなの?」
「うん…。怖い顔してたけど…」
「お見舞いに来て当然よ! 原因なんだから」
「寝顔、見られたよね…」
また見られた!とキラは両手で顔を覆う。
半目で口を開けて寝てる顔だったらどうしよう。
涎は大丈夫だったはず、とキラは自分に言い聞かせる。
「でも…冷たそうな人だと思ってたから…意外だな、って思ったの…」
「…まぁ、そうね。見た目よりは、ね」
キャリーは不服そうだが、セブルスが意外と優しいということには頷いた。
「優しいと思うよ。その倍以上に厳しいけど」
ふふふ、と彼の顔を思い出してキラは笑う。
そんな彼女を見て、キャリーとアニーは呆けたような顔を見せた。
「え? な、なに? どうしたの?」
「あなたって本当、可愛いわね」
「そういうの、素敵だと思う…」
「どういうこと?」
うんうんと頷きあう二人にキラはきょとんとする。
「んん、なんでもないわ。ね、アニー」
「うん…」
別れはもうすぐやってくる。
自覚がないならそうっとしておくべきだろう。
そうして二人は微笑みあった。
「もう、二人して一体なに?」
「んー…気になる?」
「気になるよ!」
「そうね、三年生になってから教えるわ」
「えぇ? …もう…」
こうなったらキャリーは強情だ。
そんなに重要なことではないんだろう、とキラはベッドに背中を預けた。
アニーのお迎えとキラのお見舞いということでキャリーは保健室に訪れていた。
あんまり長居するとマダムポンフリーが怒り出すだろう。
「それじゃ、私たちは寮に戻るわ」
「久しぶりに部屋に帰れる…」
「うん。ありがとう、来てくれて」
「お大事に」
「…お先に…」
パタン、と保健室の扉が閉まる。
途端にシーンと辺りが静まり返った。
シーツを顔の半分まで引き上げて、キラは目を閉じた。