第19章 目指す道
セブルスから盾の呪文を教わることになって数日後。
キラは風邪を引いた。
元気爆発薬を飲まされて、つい先ほど耳から煙を噴いたところだ。
「うう…耳がふわふわする…」
保健室のベッドの上でキラはしきりに耳の穴に指を突っ込んで、不快感を拭おうとしていた。
「仕方ないよ…そういう薬だし…」
「その内慣れるわよ」
「もう二度と飲みたくない!」
「だったら風邪を引かないようにするしかないわね」
(ううう…マグルの薬ならこんなことにならないのに)
「とってもよく効くから、明日にはここを出られるよ…」
「全く…アニーの怪我が治って保健室から出られるようになったと思ったらキラが保健室行きだなんて」
大体、あなたの先生はちょっとおかしいんじゃなくて?とキャリーが頬を膨らませる。
「もうすぐ三月が終わるとはいえ、まだ寒い日も多いのよ。乾燥呪文を使ってくれるって言ったって、びしょぬれになることには変わらないんだから。王子様みたい、なんて一時でも思った私が馬鹿だったわ」
盾の呪文で攻撃を防ぐ特訓で、セブルスはキラに怪我をさせるわけにもいかないので放水呪文を使っていた。
それを防ぐことができなければびしょぬれになるだけだ。
武装解除の呪文や粉砕呪文など、色々なものがあったけれどどれも当たると多少の怪我は避けられないからだ。
濡れる度にセブルスは乾燥の呪文をかけてくれたので、長時間濡れそぼったまま、という自体は避けられたのだが。
「王子様…?」
アニーがぱちくりと目を瞬かせる。
王子様とは似ても似つかないのだから、仕方ない。
「あの人、背が高いじゃない?」
「う、うん…」
「だからね、こう…ローブがマントみたいにバサッと翻るのよ」
「あぁ…うん、なんとなく、わかる気がする…」
「でもその一瞬だけだったわ」
ハァ、と大仰にため息をつくのでキラは苦笑いを浮かべた。
「夕食を取っておいてくれたのはすごく嬉しかったよ」
「あら。それもあの人の指示よ」
「え。そうだったの?」
「ええ。でも私からしたら、夕食が終わる前に戻ってきて欲しかったんだけど」
一人でご飯って寂しいものだわ、とキャリーがしみじみと言うので、キラはアニーを顔を見合わせる。