第18章 背伸び
「なんだ」
「あ、いや…なんでも…」
慌てて首を振ると、セブルスはまたフンと鼻を鳴らした。
「今回の事故は、カドワース自身の不注意と、お前の驕りが原因だ」
「…はい」
「それと…ペアの生徒がわざとミスをした可能性もある。そうだと言い切れはしないが」
「どうして…」
「決まっている。いつも注目を浴び、教授やクラスメートから褒められ加点も貰う。そんな奴をプライドの高いスリザリンの生徒が素直に受け入れると思うか。お前の場合、家名のこともある上…ハーフブラッドであることは知られているからな」
確かに、陰でこそこそ言われているということを、知らないわけではなかった。
けれど、まさかこんな風に意地悪されるなんて思ってもみなかった。
「お前の近くにいるカドワース、ヘンリンソンは純血であるが故…共に居ることを良く思わない者もいるだろう」
「……」
それにも心当たりがあった。
しかし、キャリーに『そんなこと気にしないわ。言いたい者には言わせておけばいいの』とキッパリと言われてからは右から左に聞き流していた。
「私のせい…」
小さく呟くキラの頼りない姿に、セブルスはため息をついた。
「スリザリンに身を置くのであれば…他を捻じ伏せるだけの力をつけるしかない」
セブルスが見つけた居場所は、足の引っ張り合いが酷いところだった。
自分の身を守れるだけの力をつけなければ立っていることも難しい。
「力を…?」
「今回のような事故は、未然に防ごうと思えばできる」
「ど、どうやってですか?」
俯いていたキラがパッと顔を上げる。
「鍋自体に防護魔法をかけるのだ」
「防護魔法…」
「それともう一つ。盾の呪文だ」
「盾の呪文、ですか」
「ああ。ただ…使いこなせるようになるまで時間はかかるだろうな」
「教えて下さい」
間髪入れずに、キラの声が廊下に響いた。
そう言うだろうな、と思っていたセブルスはフ…と口の端に笑みを浮かべた。
「盾の呪文を習得するには…少々危険が伴う。それでもいいのか」
「危険、ですか…?」
威勢のいい返事から一変して、キラは顔を引きつらせた。