第3章 出会い
Mr.ベルビィ、Mr.スネイプ、とキラが呼ぶので、ダモクレスはうぅーん、と首を振った。
「なんか他人行儀じゃない? ファーストネームで呼び合おうよー。いいでしょ? キラ」
「でも…」
呼ばれるのは良いが、呼ぶのはちょっと…とキラは戸惑う。
(確かに、グラエムのことはファーストネームで呼んでるけど、それはアニーたちがいるからだし…)
彼らはファーストネーム呼び捨てが普通なのだろうが、日本人のキラにとって年上をファーストネーム呼び捨てというのはどうにも馴染み辛いのである。
「いいでしょー、セブルス。可愛い僕らスリザリンの後輩だし!」
「…好きにしろ」
ダモクレスは一度言い出したら引かないことが多いので、セブルスは早々に諦める。
ミズキ、と呼びかけたら、すぐさま名前はキラだよ!と言い直させるに違いない。
「ほら、セブルスも良いって!」
「は、はぃ…わかりました…」
ダモクレスの強引さに、キラも承諾するよりなかった。
その後、セブルスの魔法を再び目の当たりにして、キラはまた感嘆の声をあげた。
キラのそのはしゃぎように、セブルスの心の奥で遠い昔の記憶が呼び起こされた。
数ヶ月前に絶交を言い渡された、焦がれてやまない彼女との幼い頃の思い出――。
『まぁ!とってもきれい…』
燃えるような赤い髪の彼女。
その美しいエメラルドグリーンの瞳が、セブルスをじっと見つめていた。
セブルスの手から淡い光の玉がいくつも浮かび上がっては消える。
幻想的なその様子に、澄んだ瞳の持ち主、リリー・エバンズはうっとりとした表情を見せた。
『今度は花を出してあげるよ』
ほら、見てて。
セブルスが手をかざすと、リリーの頭上から花がひらひらと落ちてきた。
『素敵…。セブ、あなたって本当にすごいのね』
リリーの微笑んだ顔は、瞼を閉じれば思い出せた。
あの頃は、世界に二人しかいないんだと思っていた。
ずっと二人でいられるんだと。
しかし、自分のたった一言でそれは打ち砕かれた。
彼女を深く傷つけ、怒らせた。
もう挽回の余地はない。
それでも、セブルスはリリーを想っていた。