第18章 背伸び
キラの宿題はセブルスに見てもらっている部分もあるので、少し後ろめたい。
キラはキャリーから巻物状になっている羊皮紙を受け取って、アニーのものも一緒に広げて目を通し始めた。
そして事件は翌日起きた。
普段、スリザリンの生徒はバタバタと走ったりはしない。
ましてや彼女は聖28一族でこそないが、それなりの名家の令嬢。
そんな彼女が、夕食時に大広間にやってきたセブルスを見つけるや否や、すっ飛んできたのだ。
「Mr.スネイプ!」
キラの友人とはいえ、普段彼女と話すことはない。
一体何事かと思えば、金色の髪を振り乱して必死の形相だ。
「キラは…キラを知りませんか?!」
「キラ?」
何故そんなことを聞かれるのかわからず、セブルスはその名を繰り返した。
「キラがいなくなってしまったんです。貴方のところに行ったんじゃないかと思ったのですが…その様子では、ご存知ないようね…」
どこに行ったのかしら、とキャリーは乱れた髪の毛をくしゃりとかきあげてため息をつく。
「…何かあったのか?」
「ええ…魔法薬の調合で失敗して…アニーが怪我を」
「怪我…?」
「材料を入れるタイミングを間違えたんです。キラだけが悪いわけじゃないのに…」
セブルスは眉を顰めた。
魔法薬の調合のミスは、時として命に関わる場合がある。
鍋の中身が爆発したり、鍋ごと溶けてしまうこともある。
そして薬の多くは液体であるために飛び散りやすく、それが皮膚につくと酷く爛れたり、大火傷したりするのだ。
「カドワースは大事ないのか」
「…顔に薬がかかって…」
キャリーの顔が歪む。
「スラグホーン教授がすぐに保健室に連れて行ってくださったけれど、今はまだ面会謝絶で…」
今日は男子生徒がキラとペアを組んで授業に臨んでいた。
ほとんど毎回加点してもらえるキラとペアを組みたいと思う者は少なくない。
一年生の頃はキャリーとアニーの二人だけと組んでいたキラだったが、二年になると他のスリザリン生とも順番にペアを組むようになっていた。