第18章 背伸び
「…呆れないで下さいね? こうかなぁ、って思っただけなんですから…」
「うんうん」
「その。まず確認なんですが。人狼に噛まれると、同じように人狼になってしまうんですよね?」
「そうだな」
「その時点で、その人の遺伝子が書き換えられているのかどうか、ということがまずわからないなぁ…と…」
遺伝子が書き換えられているのなら、体が遺伝子レベルで月の満ち欠けを感知して、変身が行われるということ。
遺伝子が変わっていないのならば、何か別のものが体の中を巡っており、それが月の満ち欠けを感知して変身するのではないか。
人狼に噛まれることで人狼ウィルスに侵されるとして、それが血であれば、血を丸々入れ替えたら変身しないのではないか。
一つ話し出すと色んなことが思い浮かんでくる。
祖父から教えてもらった植物における遺伝の話と、マグルからの観点での考えでしかないのだが、キラは勢いのままに話した。
それからあーだこーだと三人は話し合い、とりあえずキラは遺伝子についてちゃんと説明できるように調べることになった。
気づけばもう夕方である。
「そろそろ戻ろうか」
「――わ! もうこんな時間ですか?」
「わぉ」
三人はソファやテーブルを小さくして花壇の隅に隠し、荷物を手に温室を後にした。
ホグワーツ城へ入ったところで三人はバラバラになる。
セブルスは図書室、ダモクレスは寮の自室、そしてキラはキャリーとアニーがいる大広間へ向かう。
図書室ではおしゃべりできないため、大広間で今週出た宿題を片付ける生徒は多い。
特にスリザリン寮は談話室が暗いというのもある。
「キラ。今日は遅かったわね」
「うん。ダモクレスの研究の話を聞いてたの」
「ついていけるの…?」
「ま、まぁ…今日は三人であれこれ話したよ」
内容については、ダモクレス曰くトップシークレット。
キラは曖昧に笑ってごまかし、キャリーに尋ねる。
「宿題は終わった?」
「ええ…一応は。合ってるか見てもらってもいいかしら」
「もちろん」
「助かるわ」
キャリーのキラを頼もしく思う笑みに苦笑する。