第18章 背伸び
吸い込まれそうな夜空色のティーカップに、セブルスの目がほんの少し細められた。
(…気に入ってくれたみたい…)
その様子にキラは胸を撫で下ろした。
「日本茶用にはなってしまいますが…また、日本茶入れますから」
「…あぁ…しかし…日本人は皆このように重いカップで茶を飲むのか?」
セブルスはそう言いながら片手で湯呑みを持って重さを確かめる。
「いえ、湯呑みは色々なサイズがありますので。それは大きい方で…男性用とでも言いますか…。セブルスの手は大きいので、小さいものよりしっくり来るかな、と思ったんです」
来客用の小さな湯呑みは似合わない。
大体、可愛らしすぎる。
セブルスみたいな人にはどっしりとした湯呑みが良い。
だからと言って、祖父の使っている白地に紺色の細い縦筋の入ったようなデザインの湯呑みや、魚の名前の漢字がびっちり書かれた湯呑みが良いわけでもない。
「――そうか」
セブルスは再び湯飲みを目線の高さまで掲げ、じっくりと観察する。
「…キラ」
呼ばれて、キラは上目遣いに彼を見上げた。
その視線は湯呑みに向けられたまま。
「…ありがとう」
「…はい…!」
"thanks"の言葉で、キラの顔に笑みが広がった。
「わぉ。セブルス、すっごく綺麗なプレゼントだねー」
「…ああ」
遅れてやってきたダモクレスが、セブルスの持っている湯呑みに目をつける。
「日本茶用のティーカップらしい」
「え、これが? 大きくない?」
目を丸くして驚くダモクレスに、キラはぷっ、と噴き出した。
「え、なに、なに? 何か変なこと言った?」
「い、いえ…セブルスも同じことを言ったので、ちょっと可笑しくて」
ふふふ、と楽しそうに笑うキラにダモクレスも目尻を下げる。
「良かったねー、プレゼント喜んでもらえて」
「はい」
そういえば。ダモクレスは結局何を渡したのだろうか。
チラリとダモクレスを盗み見る。
パッ、と目が合ってキラは愛想笑いを返した。
「あ、あはは…」
「何さー?」
「いえ、あの…ダモクレスは何を贈ったのかなぁ、って」