第17章 エメラルドの輝き
「そうそう。トリカブト先輩の話も聞きたいし」
「トリカブト先輩って…酷いわね、ダモクレスくんでしょ? それからセブルスくんだっけ?」
ほろ酔いの父に、母がクスクス笑う。
「ダモクレスは、トリカブトが届いてからずっと減毒処理の研究をしてるよ。日本から届いたのはもったいないから、って温室に生えてるウィンターアコナイトで練習してる」
「へぇ。本当に研究熱心なのね」
父と母がニコニコと話に耳を傾けてくれるのが嬉しくて、授業の話やキャリーとアニーの話、ホグズミート村のことなど、手紙には書ききれなかったあれこれをキラはほんの少し大げさに喋った。
夕食が終わってホテルの部屋に移動しても、その口が閉じることはなく。
おやすみ、と電気を消すまでキラはずっと喋り続けたのだった。
ホグワーツの冬休みはとても短い。
あっという間に年を越した、その一日目。
キラは9と3/4番線に居た。
「ここが日本だったらね、一緒に三が日過ごせるんだけど」
「元旦しか休みじゃないなんてね」
父と母の言葉に、キラはそうだね、と相槌を打つ。
ホグワーツの授業は1月2日から開始するため、キラは元旦である今日、特急に乗って学校へ戻らなくてはならないのだ。
「それじゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
「手紙待ってるわ!」
「うん!! 二人とも元気でね!」
見送りに来てくれた父と母に何度も手を振ってから、キラはキャリーとアニーのいるコンパートメントを探す。
幾つかのコンパートメントをノックして、ようやく目当ての二人にたどり着いた。
「キラ! 久しぶりね! クリスマスプレゼントありがとう。とっても可愛らしいキャンディーだったから家族みんなに自慢したわ」
「あたしも…」
「本当? 良かった。私こそありがとう。とっても可愛かったから、今つけてるよ」
「まぁ。私達もつけてるのよ。お揃いね」
うふふ、と笑うキャリーとアニー、そしてキラの髪にはお揃いのバレッタが煌いていた。
手の平よりも小ぶりなくすんだ金色の金具に、小さなエメラルドが数個はめ込まれている。