第17章 エメラルドの輝き
どうしよう、とキラが眉をハの字に下げるのでセブルスは小さくため息をついた。
「クリスマスだからと言って、別にいつもと変わらない。それに――」
「それにー?」
「知り合いから結婚式の招待状が届いている」
「あぁ、そっか」
そういえばそうだった。
ダモクレスはベルビィ家の子息としてだが、セブルスはおそらく友人として。
ルシウス・マルフォイとナルシッサ・ブラックの結婚式に招待されたのである。
しかしマグル嫌いのナルシッサのことだ、ハーフブラッドであるセブルスを招待するのをさぞかし嫌がったことだろう。
ルシウスがなんと言って納得させたのかはわからないが、列席したとて、随分遠い席に座ることになるのは目に見えた。
(ま、Mr.マルフォイの招待を断るなんてできないしねー)
「ってことは、今年は皆ホグワーツにいないんですね」
「そうなるねー」
「良かったです、安心しました。セブルス一人だけ残るなんて、心苦しいです」
学生最後のクリスマスなのに、一人ぼっちなんて寂しすぎる。
キラはほっとして相好を崩す。
セブルスにはなぜそんなことが気にかかるのか全くわからなかったが、悪い気はしなかった。
あっという間にクリスマス休暇になった。
クリスマスイヴ当日は、園芸を営むブルーム邸には酷く忙しい日である。
ポインセチアと柊の出荷最終日だ。
両親がホテルに来られるのは早くても夕方以降になる、と手紙に記してあったため、キラはホテルの部屋で休暇中の宿題を一気に終わらせた。
くたくたになった父と母がホテルにやってきたのは、その日の19時過ぎだった。
「遅くなってごめんね」
「ううん、大丈夫。お疲れさま」
「ずいぶん待たせたんじゃないか?」
「うーん、宿題が全部終わるくらいは待ったかな」
くすくすと笑うキラを、父と母がそれぞれぎゅっとハグしてくれた。
夕食を食べながら、父と母が今日の多忙ぶりを面白可笑しく話してくれる。
結婚式があって、そこへ花を届けに行く仕事があったため、いつもよりも忙しかったらしい。
(結婚式か…セブルスの出席してる式だったりして)
魔法使いの正装は長いローブだけれど、セブルスはどんな格好で出席したのだろうか。
ちょっと見てみたい。