第17章 エメラルドの輝き
「『体を変化させる薬』、ですか」
セブルスに近寄り、彼の読んでいる書物の表紙に書かれたタイトルを読み上げる。
「ポリジュース薬以外にもたくさんあるんですね」
「そうだな…お前が去年飲んだ猫化の薬の原型も載っている」
「えっそうなんですか?」
「ああ」
ここだ、と指差された部分を読んでみると、確かに猫の髭を生やすにはこの材料が必要だ、などと書いてあった。
(…やっぱり、猫の髭それ自体が材料なんだ…)
キラはきゅっと眉を顰めた。
まさかミセス・ノリスの髭…いやいや、そんな、まさか。
「……」
どうやって手に入れたのかは考えないでおこう。
「そういえば…今年は、もう招待状は届きましたか?」
「招待状?」
「はい。スラグホーン教授のクリスマスパーティの」
「ああ…来たが…今年は行かないぞ」
「わ、わかってますよ。私、今回は招待状来てませんから」
やはり去年は人数が少ないから、という数合わせのためだったのだろう。
今年は招待状が来るのかどうかわからなくて、かといってスラグホーンに確かめるのも何だか厚かましい気がして出来なかったのだ。
それに、今年のクリスマスはこれまでと違う。
両親と曾祖母に会えるのだ。
もちろんブルームの屋敷に足を踏み入れることはできないのだが、クリスマス休暇中、キラは両親と共に屋敷から少し離れたマグルのホテルで過ごすことになっていた。
招待状が来ないのであれば、スラグホーンへのお断りの文言を考える必要もない。
「またホグワーツに残るのか?」
「いえ…休暇中は、ひいおばあ様にお会いする予定なんです」
「…そうか」
嬉しそうに話すキラに、セブルスはほんの少し口元を緩めた。
「ふーんふーん。あのスカーレット・ブルームにお会いするわけだ?」
先ほどまでガラスペンを握り締めて羊皮紙とにらめっこしていたダモクレスが会話に入ってくる。
「はい。おばあちゃんから聞く限りは、なんだか怖そうなんですけどね…でも、楽しみです」
「そっかー。じゃあセブルスは今年クリスマスは一人ぼっちってわけか…。かわいそうに」
「えっ、そうなんですか?!」
「…別にいいだろう」
「良くないですよ、クリスマスなのに…」