第17章 エメラルドの輝き
全くもって身に覚えが無い。
自分の周囲の草花が全て枯れてしまっていた。
まるでクレーターのようだ。
「この子、返してもらうねー」
そう言って、ダモクレスがキラの腕を再度掴む。
そしてキラは引っ張られるまま、二人から遠ざかる。
「あ…待って!」
縋るようなリリーの声に、数歩踏み出した足が止まった。
自分と同じ色の瞳。
なのに全然違う輝きを放つ双眸が、再びキラを揺さぶろうとした。
「キラ。行くよ」
「え…」
何かを言いかけるリリーを遮って、ダモクレスはその場からキラを引き離した。
さくさくと芝生を踏みながら、ダモクレスはどんどん先を歩く。
セブルスとは違って、歩幅を考えてくれているのか小走りになることはなかった。
「あ、あの、ダモクレス…」
おずおずと声をかければ、その足がピタリと止まった。
クルリと振り向いて、ダモクレスがキラの顔を覗き込む。
「あのね。あんなところで魔法暴発させちゃダメでしょー」
「魔法の…暴発…?」
「小さい頃、皆が通る道なんだけど…自分の気持ちが制御できないほど高ぶると、魔法が暴発しちゃうんだ」
「…ち、小さい頃、だけですか?」
「ま、そうだね。ホグワーツにきて魔法の制御の仕方を学ぶからね」
「……」
つまり、自分はまだまだ魔法が制御できていないということか。
「キラの魔法の力がどの程度かはわからないけど…あのままだったら危なかったかもー」
「……き、気をつけます…」
魔法の暴発なんて、正直あんまり信じてはいなかった。
庭の木を枯らすなんて、できるわけないと思っていたのだが。
(…ひいおばあちゃんが家に入れてくれないの、分かる気がする…)
自分だって、丹精して育てたバラが一瞬にして枯らされたら、温室出禁にしてやりたい!と思うだろう。
(ちゃんと制御できるようになろう…)
ブルーム家に行きたいと思っていた心が一瞬にして消えた。
「…ダモクレス」
「んー?」
「どうしてあんなことになったのか、聞かないんですか?」
「…聞いて解決することなら聞くけどー。解決しないことでしょ」