第3章 出会い
「ちょっと待ってください!」
STOP!!の声は思ったよりも大きく、叫んだようになってしまい、二人はびっくりする。
「あの――、私、母国語は英語じゃないので…あまり早く話されると、聞き取れません。ごめんなさい」
「…あ、そっかー。こちらこそごめんね」
ダモクレスはずっと握っていた手をようやく離してくれる。
「いえ…私、キラ・ミズキです。えっと…」
キラは黒ずくめの男子生徒を見やった。
肩にかかりそうなべったりとした黒髪、血色の悪い顔色に鉤鼻…どこかで見たことがあるような気がした。
「…セブルス・スネイプ」
キラの視線に気づいたのか、彼はさほど大きくない声で名乗った。
「その、Mr.スネイプ。あの百合のことですけど」
そう言った途端、セブルスはキラにぐいっと近寄った。
キラは若干顔を引きつらせながら、説明を始める。
百合はもともと株にウィルスを持っていて、健康なときは発病しないが、水のやりすぎや害虫の影響で弱ってしまうとウィルスの活動が活発になってしまい、葉が落ち、枯れてしまう。
水やりは少し注意が必要で、庭植えの場合はあまり必要ない。
しかし、鉢植えの場合は表面の土が乾ききる前に水をやらなくてはならない。
ここの花壇は庭植えと似たようなもので、水やりは一週間に一度程度で問題ないだろう。
すでに葉が落ちたものは抜いてしまい、まだ生きているものは植え替えをするのが得策だった。
キラの説明をセブルスはおとなしく聞いていた。
「毎日、水をやっていた。それが間違いだったのか…」
「ええ…初心者の方はよく間違えます…」
落ち込んだ様子のセブルスに、キラはなんとも言えない気持ちになった。
見た目に似合わず、相当百合が好きなようだ。
「でも、大丈夫です。まだこっちの株は生きてますから」
そう言って、キラは残った百合を丁寧に掘り起こす。
「見てわかるもんなの?」
セブルスの手に渡った百合の株をダモクレスはまじまじと見つめる。
キラは苦笑いして答えた。
「本当にダメなものは、根が腐るのでわかりますが…中途半端なものは、わからないと思います」