第3章 出会い
(こ、怖いよ…!)
グラエムを知っている分、優しさの欠片も感じられない、どこか陰鬱とした目つきの悪い彼にビクついてしまう。
ひょろりとした体格なのに背が高く、顔色が悪い上に眼光が鋭い。そんな上級生に詰め寄られて、固まらない一年生がいるだろうか。
「おい。聞いてるのか」
返事をしないキラにイラついたのか、余計に目つきが悪くなる彼。
(うわーん!! 誰か助けて!!)
ほんのり涙がにじむ。
そのときだった。
「はいはい、そこまで。セブルス、怖がられてるよー」
また一人男子生徒が現れた。
明るいブラウンヘア、四角い眼鏡の彼が大丈夫?とキラの顔を覗き込む。
「あ、あの…」
「怖かったでしょ? あいつ、いつもあんななの。真面目なだけだから、許してあげてよ」
ぱち、とウィンクをされてキラは大いに戸惑った。
「ダメでしょ、あんな小さい子睨み付けたらー」
「そんなつもりは…」
「セブルス。君にそのつもりがなくても、相手はそうは思わない」
「……」
セブルス、と呼ばれた男子生徒はまだ何か言おうとしたが、そのまま押し黙る。
眼鏡の彼がキラの方に向き直る。
「俺はダモクレス・ベルビィ。君、セシリー・ブルームのお孫さんでしょ。前から喋ってみたいと思ってたんだー!」
ダモクレスは嬉しそうに笑い、キラの手を取り握る。
「ブルームブランドにはお世話になってるんだ。こんなところでお知り合いになれるとはねー」
「は、はぁ…」
「君は、お祖母さんみたいに草や花の質を見分けることができるの?できたら凄いと思うよー!いや凄い!俺、魔法薬の研究やってるんだけど、調合の比率結構難しくてさー。そんな能力があったらもっとスムーズに研究は進むと思うんだよねー。本当うらやましい能力だよ。俺も欲しい!!!」
(な、何この人…)
弾丸のように喋り捲るダモクレスに呆気に取られる。
どうしよう、とチラと黒ずくめの男子生徒を見ると、目があった。
しかし、彼は怒ったような表情でじっとこちらを見つめるだけ。
「それでさー、あっちに俺が実験的に栽培してる薬草があるんだけどちょっと見てくれない?なんか発育悪いんだよねー」
「え、ええ…」
流暢な英語は止まらない。
キラには少し聞き取りづらくなってきた。