• テキストサイズ

【HP】月下美人

第17章 エメラルドの輝き


「――君は日本人だから、このイギリスでの出来事に興味はないのかもしれないけどね」
 キラは頭を殴打されたかのようなショックを受けた。

(そんなことない、なんて…言えない…)

 ホグワーツに居れば襲われることはない。
 殺人事件があったと誰かが話していても、被害者は全く知りもしない外国人。
 キラは気にも留めていなかった。
 もちろん、日本でも殺人がないわけではないけれど。
 自分にそれが降りかかることなんてまずない。
 被害者に気の毒だと思いはすれども、自分の身がどうだとか、思ったこともなかった。
 それこそホグワーツの外、イギリスかスコットランドかイマイチ判断のつかない、別世界の出来事だったのだ。

 ジェームズの視線が痛い。
(でも…だって…私に関係ないから…)
 無関心でいられたのに。
 今朝、誰かが話していたのを知っている。
 マグルの家が襲われるという事件が立て続けに起こっていることを。
 けれど、広い世界で起こった出来事一つ一つ全てに心を痛めることなど、誰ができようか。
 それでもジェームズの言葉がキラの心に突き刺さった。


「キラ。あなたは彼とは違うわ」
 リリーの潤んだ瞳がキラを逃げ場のない隅へ追い詰める。
(何が違うの? 同じスリザリンで………)
 ただ、それだけだった。
 同じスリザリンだというだけで。
 それ以外の共通点は。
(私も、四分の一だけど…ハーフブラッド…でも、それだけ…)
 でも、そんなの。
 そんなの、皆違う。
 リリーだって違う。ジェームズだって違う。
 それなのに。

「あなたは、あちら側に行ってはダメよ」

 あちら側ってなに?
 それは犯罪者のこと?
 死喰い人のこと?
 闇の魔術を使うこと自体がダメなの?

 闇の魔術は、許されざる呪文3つだけではない。
 ちょっとイタズラしようと使われる呪文はそのほとんどが闇の魔術に分類されるものだ。
 相手を黙らせる呪文だって、何か物を縛るときに使う呪文だって、分類は闇の魔術だ。

 誰だって日常的に使う魔法なのに。
 人を無理矢理踊らせていたあの魔法は、闇の魔術には入ってないかもしれない。
 けれど、良いものだとは思えない。

(セブルスだって…)

/ 347ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp