第17章 エメラルドの輝き
この人は、一体何を言っているのだろうか。
太陽を背負ったリリーがゆらり、と陽炎のように揺れた気がした。
「彼は…、死喰い人になろうとしているのよ」
唇をかみ締めつつ、リリーは悲しそうな顔をする。
しかし、キラには分からなかった。
死喰い人というのは、そんなに悪いものだっただろうか。
「それは…純血主義の、不死の研究をする人たちのこと、ですよね」
キラが問いかけると、ジェームズは怒りを滲ませて言った。
「ただの純血主義じゃない。純血以外を皆殺しにするのが目的の殺戮集団だ。マグルをかばう純血さえも殺す奴らさ」
(それって…一部の過激派のことじゃないっけ?)
「あなたはきっと、死喰い人について…正しく知らないのね」
「正しく…?」
困惑するキラの手を、リリーがそっと握り締める。
死喰い人というのはね…と、語り始める彼女の口を止める術はなかった。
始まりは、不死を求めたところから。
次に短命なマグルの血は避けるべきだ、と。
そして、純血が最も尊いのだと。
とてもシンプルな考え方だ。
単純で、愚かな。
そしてその思想はマグルを避けることから、排除へと変わっていった。
闇の帝王が殺戮を良しとし、ついにマグルの廃絶を掲げたのはここ数年のことだという。
名前を言ってはいけないあの人、例のあの人などと人々は恐れ、その名を口にはしない。
死喰い人でさえ。
(――グラエム…だから、あのときあんなことを…)
『大きな声で話してはいけないよ』なんて。
不思議だな、と思ったのだ。
「スリザリンの生徒の親の中には死喰い人が大勢いるんだ」
「殺人犯がいるっていうことですか? でも、どうして捕まらないんですか?」
「あいつらは証拠を残さない。誰が死喰い人なのか、死喰い人同士でも知らないのさ」
「それって…その犯人が死喰い人だという証拠もないんじゃ…」
「それはあるわ。襲われた人の家の上には、闇の印が浮かび上がるの」
「闇の印…?」
「見せしめだよ。死喰い人がこの家のマグルを殺した…次はお前だ!っていうね。けれど、肝心の死喰い人が一体誰なのか…それがわからない」
「そんな……」