第17章 エメラルドの輝き
「あのときから、君のことが気になっててね。スリザリンのアジア人で、って話したらリリーが知ってるって言うものだから」
「…私は…」
あんたなんか嫌いだ、と目に思いを込めてキラはジェームズを睨みつける。
「おっと。あのときのことは、もうお互い水に流そうじゃないか」
こんな風に、とジェームズが杖を振った。
「アグアメンティ」
ごぼっ、と音を立てて杖の先端から水が勢いよく発射される。
まるで大砲の弾のように、一定の間隔で水の玉が飛んでいく。
池の中心にぼちゃんぼちゃんと吸い込まれるようだ。
「ジェームズ。それじゃ全然流れる、とは言わないわよ」
「ん? リリー、ほんのジョークだよ」
ハハと歯を見せて笑うジェームズは、やはり皆が噂するだけのことはある。
シリウスとはまた違う、人を惹きつける空気を持っている。
ハンサムというわけではない。
メガネにぼさぼさ頭で、一見するとすごく地味だ。
けれど笑った顔と仕草に愛嬌がある。
そんなに悪い人じゃないのか?
(でも…セブルスに、あんなこと…)
困惑した様子のキラに、リリーが歩み寄った。
「あのときのこと、が何かはよくわからないけど…きっと迷惑をかけたわね。ごめんなさい」
「…いえ」
あなたが謝ることじゃない、とキラは首を振った。
「アグアメンティという魔法は…マグルのあなたなら想像がつくかと思うけど…杖の先をホースの先端だと思えばいいわ。水をどんな風に出したいか、とイメージしていてもすでに水は放出された後だから制御できないの」
「え…」
「ああ、ごめんなさい。さっきから、ずっとその魔法を練習していたから…気になって」
「すぐにできるさ! こう、バッと構えてキュッと締めてえいって呪文を唱えるんだよ」
「えっと…?」
「ジェームズ。そんな説明じゃわからないわ。誰しもがあなたみたいに直感でコツを掴むわけじゃないのよ」
しょうがない人ね、と笑う彼女の赤毛が風にそよそよと揺れるのを、キラは目を細めて見ていた。
本当に、素敵な人。
他人に興味の無さそうなセブルスが彼女に心を寄せている理由が、なんとなくわかる。