第17章 エメラルドの輝き
「アグアメンティ!」
勢いよく振った杖の先から水が出る。
「……」
ちょろちょろちょろちょろ、と。
キラが握った杖から力を抜けば、水はピタリと止まった。
「水切れはいいんだけどな…」
遠くの池に目掛けて放ったつもりの魔法は、キラの足元の水溜りを大きくするだけだった。
平日の午後。
授業が終わって、いつもなら図書室へ向かうキラだったが、ここ最近は池のほとりに通い詰めている。
先日、セブルスに不必要にびっちょびちょにされたキラはそのことを少し、ほんの少し根に持っていた。
仕返ししてやろうとは思わないが、セブルスの繰り出す魔法に一喜一憂してしまう自分がちょっと情けない。
今、三つしか違わないのに物凄く年下扱いされている。
それが癪でキラは必死に魔法の練習をしていた。
(すぐにマスターして、吃驚させるんだから…!)
クリスマスまでには自由自在に水を操りたい。
できるだけ早くマスターしなければ寒くて外で練習するのが辛くなってくる、というのが本音でもある。
「アグアメンティ!」
ぴゅぴゅっと一瞬勢いがついたかと思えば、再びちょろちょろ。
「んもう! なんでなの?!」
キラはキィィッ!となって杖を振り回す。
地面に叩き付け…ようとして、折れたら困るな、と膝の高さ辺りからポトリと落とすに留めた。
(上手くいかない…)
セブルスに助言を求めれば的確なアドバイスを貰えるだろうことはわかっている。
「はぁ…」
キラは足元にできた水溜りから少し離れて腰を下ろした。
「難しいなぁ」
そう、ぽつりと独り言を言ったつもり、だった。
「うーん、調節、ってやつができてないんじゃないかな」
「え?」
突然話しかけられて、キラは驚いて後ろを振り返った。
「あ…」
笑みを浮かべてその場に立っていたのは、あのジェームズ・ポッター。
そしてその隣には。
「Ms.エバンズ…」
どうしてこの二人が自分に話しかけてくるのだろうか。
そんな気持ちが顔に出ていたようで、ジェームズは大げさに肩を竦めてみせる。