第16章 追いかけたい
セブルスの仏頂面はいつも通りだが、なんとなく楽しそうだ。
(――いいなぁ。私もあの中に入りたいな…)
キラはもう完全に蚊帳の外だった。
(私が二人と同じ学年だったら…)
二人の話がわかったのだろうか。
彼らと同じ男で、同じ部屋だったら。
セブルスとダモクレスと、対等に話せただろうか。
もっと早く生まれてきたかった。
そうすれば、もっと同じ時間、同じ空間を共有できただろうに。
二人と同じ道具入れを手に入れたとき、ほんの少し近づいたんじゃないかと思ったけれど。
それは大きな間違いだったようだ。
二人はまだまだ遠いところにいる。
(…私も、頑張らなくちゃ……)
そう思ってからしばらくして。
相変わらずセブルスとダモクレスは二人であーだこーだと談義している。
半分ほどは、もう何を言っているのかわからなかった。
暖かい温室の中では居心地が良くて。
靴を脱いでリラックスしたのもあるのかもしれない。
頭がぽーっとしてきて、瞼が落ちてくる。
(二人とも話しに夢中だし…寝ちゃってもいいよね……)
眠気に我慢できなくなったキラは、座布団を枕にしてござに寝転んだ。
(わ…すっごい落ち着く…)
十も数えない内に、キラは眠りに落ちた。
ふと気づけば、黒髪の少女は横になって寝息を立てていた。
聡いとはいえ、まだキラは二年生。
自分達の会話について来られるはずもない。
「…寝にくくないのかなー」
「日本ではFUTONというものを敷いて寝るらしいが」
幼い寝顔を覗き込みながら二人はひそひそと会話をする。
ござを触ってみると、全然柔らかくない。
「寝るのと触るのと、違うと思う?」
「…一緒だろう」
「だよねー」
こんな硬いところで寝て、痛くないのだろうか。
「……」
ダモクレスは無言でキラの隣に横になる。
仰向けから左を向いてみたり、右を向いてみたり。
「……」
最終的に、むくりと起き上がる。
「うん。痛い」
「だろうな」
「セブルスも試してみない?」
「断る」
「あ、そー」
つまんないの、とダモクレスはソファに座り直した。