第16章 追いかけたい
ソファに寝転がるのもいいが、やはりあの畳の感じが良い。
かといって畳は持って来れないので、ござで妥協した。
コロコロと転がしてござを敷き、キラは靴を脱いでその上に上がった。
そしてポシェットから丸めた座布団も引っ張り出す。
「日本ではこうして靴を脱いで座敷に上がり、このようなクッションをお尻の下に敷いて座るんです」
寝転ぶこともできますよ!と座布団を枕代わりに横になってみせれば、ダモクレスとセブルスは怪訝な顔をする。
「靴を脱ぐのか?」
「はい。でなきゃリラックスできません」
キラは起き上がって再度ポシェットの中を探った。
「今日は日本風でお茶しませんか? 日本のお茶を持ってきたんです」
そう言ってキラは茶筒を開けてその香りを嗅ぐ。
緑茶の香りは本当に落ち着く。
ほぅ、と息をついてからセブルスとダモクレスを見上げて、どうですか?と首を傾げた。
「…そのGOZAというのは遠慮する」
「お茶は飲んでみたいけどねー」
靴を脱ぐのは抵抗があるようだ。
「そうですか…」
少し残念に思いつつ、キラはティーポットに茶葉を入れる。
「お湯は熱湯だと良くないので、ちょっと冷ましたものを注ぎます」
そうして少しだけ蒸らして、キラはティーカップに少しずつ順番に注いだ。
(…ティーカップに緑茶って、変な感じだなぁ)
かといって湯飲みを持つセブルスとダモクレスもイマイチ想像できなかった。
コトリ、と音を立てつつ二人の目の前にカップを置く。
「どうぞ。グリーンティです」
ふわ、と青い香りが立つ。
「グリーン、だね」
「普段飲んでいる紅茶と茶葉自体は同じです。発酵させているかさせていないか、の違いです」
「名前は聞いたことはあるが…飲むのは初めてだな」
「それから。お菓子も持ってきました! お煎餅です」
キラは二人の前に煎餅を入れた器を置いた。
「お米のお菓子です。お好きなものをどうぞ」
その中から一つ、しょうゆ煎餅に海苔を巻いたものをキラは手に取った。