第16章 追いかけたい
可憐な青い花。
毒をもっているようには到底思えない。
「こちら側とこちら側が異なる品種らしい」
「へぇ…あ、確かにちょっと葉の形が違いますね」
そう言いながら、キラは根元や茎部分を覗いてみる。
「それで…一体何の研究を?」
興味津々と言った様子のスラグホーンだが、ダモクレスはにっこり微笑を浮かべて小さく首を振った。
「残念ながら、まだ内緒です。新薬開発は慎重に行わなければなりませんから」
「なんと…新薬の開発、とな。なるほどなるほど…」
既存薬の改善のための研究と違って、新薬の開発となるとこれは物によっては世紀の大発明となる。
スラグホーンは感嘆の声をもらした。
「うむ。益々協力を惜しむわけにはいかないな。がんばりたまえ」
「はい。ありがとうございます」
「それではMs.ミズキ、彼についてしっかり学びなさい。また何かあればいつでも頼っておいで」
「はい。いつもありがとうございます」
ダモクレスとキラはそれぞれ二つずつトリカブトの鉢を抱えて研究室を後にした。
「薬にする部分は根っこの部分だったよねー」
「はい。減毒処理後に乾燥させて、少量ずつ使うみたいです」
「うーん…減毒処理が一番難しそうだね」
「茎や葉、花にも毒性はあるんですが、根っこが一番なので…葉や花から試してみるのもいいのではないでしょうか?」
「そうだねぇ…。近くに実験台がいるわけじゃないから、悩ましいところだよ」
そう言いつつダモクレスはニコニコしているので、キラは一体何の薬を作るつもりなのか、俄然気になりだした。
とはいえ、スラグホーンにも内緒だったのだから自分に果たして教えてくれるのだろうか、と唇を尖らせる。
トリカブト薬、なんて言われてもそのまんまで、何のための薬なのか全然分からない。
セブルスはすぐに分かったようだったので、まだまだ二人との壁は高いのだなぁと悔しくなった。
「おまたせー」
「…別に、待ってない」
「またまた、そんなこと言ってー」
談話室に着くなり、セブルスが立ち上がってやってくる。
キラが持っていた鉢をひょいと取り上げ、隅の方のテーブルへ運んでくれた。
「あ、ありがとうございます」
キラは思わずセブルスをじっと見つめた。