第16章 追いかけたい
「Wolfsbane Potionの研究、なんだけどなー」
「それは…本気か?」
「そうだよー。キラから面白い話を聞いたからさ、もしかしてできるんじゃないかと思ってー。ほら、興味沸いてきたよね?」
「……」
無言を是、と捉えてダモクレスはふんふんと上機嫌に笑った。
(トリカブト薬…何に使う薬なんだろう?)
キラは首を傾げた。
その日全ての授業が終わり、キラは約束通りスラグホーンの研究室へ向かった。
研究室の前にはすでにダモクレスがいて、彼は腕組みをして廊下の壁にもたれかかっていた。
いつものふわふわした雰囲気ではなく、研究者の顔をしてじっと考え事をしているようだった。
(セブルスとダモクレスって、ちょっと似てるかも)
こつこつ、と石畳みに靴音が響くのにようやく気づいたのか、ダモクレスがこちらを振り向いた。
「授業お疲れさま~」
ダモクレスはにへらっと笑って、さっきまでの真剣な顔はどこへやら、キラの腕を取って素早くスラグホーンの研究室の扉をノックした。
(…やっぱり似てないかなぁ?)
そんなことを考えていると、中から返事があった。
「スラグホーン教授。ダモクレスです。あと、Ms.ミズキも」
ガチャリと扉が開き、スラグホーンは驚いた様子で二人を出迎えた。
「やぁやぁ。驚いたよ。君達二人が一緒に来るとは」
ああ、そういえばクリスマスパーティーのときにそのような話をしていたっけな、とスラグホーンは一人ごちた。
「なるほど、わざわざこちらに取り寄せたい理由がこれでわかった。ダモクレス、君の研究のためだね?」
「そうです。ウルフズベーンの面白い話を聞いたもので。なので…これからも何度か"お願い"をするかもしれません」
ダモクレスはそう言ってスラグホーンの顔を見つめた。
ダモクレスの生家、ベルビィ家は魔法薬開発のスペシャリストを輩出している。
そんな彼とのつながりを、スラグホーンが大切にしないわけがない。
「もちろん。私のできる限り応えよう」
「ありがとうございます。それで…ウルフズベーンは」
「こっちだ」
研究室の奥、整理整頓されたガラスケースの隣にそれはあった。