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【HP】月下美人

第15章 ナイトメア・ビフォア・クリスマス


 ハロウィンパーティーの騒動の後。
 セブルスはまっすぐ寮に帰らず、梟小屋へ向かっていた。

「お前の主人に届けてくれ」
 エメラルドグリーンの足環をつけた梟は、嫌がる素振りは微塵も見せず、むしろセブルスの指に嘴をこすりつける様に擦り寄ってきた。

「…頼む」

 セブルスの言葉に返事をするようにホゥ、と啼いて梟は瞳を閉じる。
 飛び立つのは朝になってからだ。
 スリザリン寮に開閉式の窓はない。
 届け先は、梟の主。
 黒い髪の少女だ。

 あの日以来、まともに顔を合わせていない。
 あの緑色の瞳が、怖いのだ。
 どうしてあの瞳は、いつも自分の無様な姿を捉えてしまうのだろうか。
 リリーのときもそうだった。
 あんな、情けない格好を晒されて。

 ぎゅっ、と唇を噛んでセブルスは小屋から城下を眺めれば、蝙蝠が数匹飛んでいるのが見えた。
 あの赤ずきんの仮装は、おそらくキラだ。
 真正面から見たわけではないが、チラリと見えた横顔は確かにキラだった。
 彼女の顔はとても特徴的だ。
 自分たちに比べて鼻が低く、顔の凹凸が少ない。
(彼女は…自分たちとは違う)
 純血だとか、穢れた血だとか。
 マグル、という括りでもないような、そんなものとは関係ない世界の人種なのだ、と思わせる。


「関係ない…か…」


 セブルスの声は闇夜に溶けて消えた。




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