第15章 ナイトメア・ビフォア・クリスマス
「お…おぉ…」
すごい。それしか感想が出てこない。
陶器のように白い肌には赤みが一切無く、片目の目尻から赤黒いラインが一筋。
そして頬の辺りには割れてヒビが入ったような黒い筋が幾つも入っている。
ずいぶんと量の多いつけまつげと、これまた赤黒く塗った唇が一際目立つ。
「最後はこれよ!」
そう言ってベタァ…と白いワンピースに真っ赤な血糊をキャリーが塗りつける。
「あぁ…」
最初からこうするつもりだったのだろうが、酷く汚れたような気持ちになる。
膝下丈より長いワンピースは生地がたっぷりと使われていてボリュームがあった。
ほとんど同じ格好をしたキャリーとアニーだったが、メイクはキラほど濃くない。
完全に遊ばれているようだ。
「さぁ、広間に行くわよ! ちゃんとキャンディは持った?」
「うん、大丈夫…」
「あ、ちょ、ちょっと待って…!」
今にも部屋から飛び出していきそうな二人にキラは慌てて去年と同じく日本から送ってもらった金太郎飴をひっつかみ花かごに放り込んだ。
一人この格好で出て行く勇気はない。
(あれ…でも、これだけ化粧してたら私だって分からないかも…?)
ハロウィンパーティー会場となった大広間に繰り出した三人は、グリフィンドール側のテーブルに目が釘付けになった。
「見て、キラ! シリウス・ブラックだわ!」
「み、見てる、見てるけど…!」
「まぁ、すごい…」
三人の視線だけではなく、多くの視線を集めているのは海賊の仮装をしたシリウス・ブラックとジェームズ・ポッター。
後の二人もすぐ傍に控えている。
「なんたって今年でホグワーツを卒業だからね! 最後は思いっきり楽しまなくっちゃ!!」
「「キャー! シリウス! 一緒に写真撮りましょ~!!」」
「ああ、わかったわかった…。順番だぞー!」
グリフィンドールの生徒だけではなく、ハッフルパフやレイブンクローの一部の生徒まで、シリウスたちの周囲に群がっている。